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赤ワイン
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風太は缶ビールを一本飲み終え、もう少し飲み足りないと今度は赤ワインをグラスに注いだ。
「風太、それ美味しいの?」
狭いテーブルの向かい側にいた壮琉が膝立ちで床を移動して、ぺたんと隣に座った。身を乗り出し、グラスに鼻を近づけくんくんする。
「まあまあだろう。安もんだしな。」
値段の割には味は気に入っている。とはいえ、風太は無類のワイン好きでもない。たまに飲む、ただそれだけであり、高級ワインには縁も無い。きっと安物の方が舌に合う。
「ぶどうの匂い。ぶどう好き。」
「飲んでみるか?」
「うん。ちょっとだけ、」
風太がグラスを渡すと、舌を出し、傾けた液体の表面をほんのちょっと舐めた。行儀がいいとは言えないし、これから風太が飲む予定のグラスに残された赤ワイン…考えたくもないが唾液が混ざり込んだ事は確実だった。
「お前…、そんな飲み方すんなよ。」
「ん?何か駄目だった?」
全く分からない、そう物語るきょとんとした顔。タチが悪い、相手は他人との距離感を測るのが苦手なタイプなのか、ここで風太の言い分を聴いてもピンと来ないだろう。
「いや、もういいや。気に入ったなら、グラスに注いでやろうか?」
「うーん。これって美味しいのかな…でももうちょっと飲んでみる。」
風太のグラスをまた傾けて、ペロリと舌を出してる。再びの、舐め取る行動。風太は注意するのは完全に諦めた。トマトスライスと一緒に添えていたチーズを箸で掴んで食べる。肝心のトマトは壮琉が食べてしまっていた。
「ねえ…なんかふわふわする。」
「ん?」
寄りかかってくる体を受け止めれば、顔が真っ赤になっている。そんなにたくさん飲んだのかとグラスを見れば、大して減ってもいない。アルコールに弱い体質の様だ、今まで飲んだ事が無いと言っていたのを思い出す。
「おい、大丈夫か?」
「んー、ふふふ。風太の匂いがする。」
ミルクティー色の頭が胸元に擦り寄る。くんくん鼻を動かし、すりすりと顔を押し付けて来る。
「こら、何やってんだ。」
「雪ちゃんが、そんなに会いたいなら会った方がいいって言ってくれたんだ。」
「せつちゃん?」
彼女の名前か?風太は胸元を見下ろし、ずるずると下へと落ちて行く頭を確認した。酔っ払いは、とうとう膝に頬を付けて目を閉じてしまう。これはちょっと休ませておくかと、残されたグラスを手に取り赤ワインを飲む。なんとなく、括られた髪の束に指を入れすくった。
「さらさらしてんな、」
予想通りの、柔らかでさらさらの髪は大した重量も無く指を通り抜けた。
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