アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
シングル
-
風太は風呂で更に疲弊し、重い足取りでベッドへ向かった。早々に横になる。救いは、明日が日曜日であり仕事が休みだという事だ。時間を気にせず寝ていられる。
「風太、もうちょっと詰めて。落ちちゃう。」
当たり前の様に身を寄せて来る。
「……。」
勝手に落ちてろ。心の中で返事をして隣を見れば、風太が乾かしてやったふわふわの髪が優しく揺れる。添い寝する相手としては申し分ない容姿だろう。但し、風太の性的対象は女性であり、過去一度も男性に惹かれたためしはなかった。
無言で壁際へ詰める。風太がその気になるもならないも、女性相手のヒモだったのなら壮琉にその気は無いだろうと思われ、万が一を考えてしまう自分の思考回路を笑う。しかしその不安を抱えている時点で、風太自身がぐらついているのだと自覚がない。
「タオルケット、小さいね。」
「…シングルなんで、一人用。ちなみにベッドも一人用。」
「そっかー。風太の匂いがするから好き。優しい匂い。」
風太の言動から嫌味を全く感じてないのか、くんくんと匂いを嗅いで微笑む。新手の天然系変態か、それともこれが誑し込むテクなのか、と目眩がする。
「あのさ、菊ちゃんは…女性だよな。いや、分かってるんだけどさ念のため。本当、ただの確認だから。」
「んー、菊ちゃんは男だよ。雪ちゃんも。」
「……っはあ!」
飛び起きて、壁にぶち当たる背中。そんな風太を不思議そうに見て、壮琉はどうしたの?と首を傾げた。
まさかの、男性相手のヒモ生活確定にこの容姿ならばと納得してしまう己が怖い。風太は過去付き合った彼女を思い浮かべた、柔らかな髪色やロングが好みだし、色白であればなお良い。しかも、好きになると構いたくなる質である。どれもこれもが当てはまる、身を起こした壮琉を見ながら鳥肌が立つ。
「風太?」
紅茶色の瞳がカラーコンタクトではないと、こんなに間近で見ればとっくに気付いている。息がかかるほど、睫毛の艶も見て取れるほど、顔を寄せる事に躊躇がない相手。唇が微かに開き、
「寝ないの?」
音に合わせ動く、視線が釘付けになる。気持ちが引き寄せられ壁から背中が離れる、更に近付く距離。
ああ…触れる。
「…ベッド、譲る。」
あとほんの少し。唇には触れずに、言葉を吐いた。寸前でとどまれた自分に拍手を送りたい気分で、壮琉を残して風太はベッドを降りた。アルコールゼロでこんな感情が芽生えるなど、そうとう溜まっているのだと顔を覆う。
「はぁ…風俗かあ。」
進むべき道はどっちだ、と冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 81