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事務所入口で光一に会う。
yoshiは豊川に彼が介抱してくれたと聞いていたので、
「あの…ありがとう。なんか、迷惑かけたみたいで、ごめんなさい」
素直に御礼と謝罪をした。
「もう大丈夫か?」
「うん」
頷くyoshiはいつもの彼で光一はホッとしたものの、複雑だ。
先程の話が頭を過ぎるから……
「そっか、よかった」
光一はyoshiの頭を軽くポンポンと叩いた。
いつもなら、触るな!と怒るyoshi。でも、何故だろう?嫌じゃなかった。
「光一さんありがとうございます。連れて帰りますので」
直は深々と頭を下げる。
「二人を送って行くから」
豊川は鍵を手に歩き出す。
「俺も行く」
光一がそう言うと、
「お前は家帰らなきゃダメだろ?」
豊川にそう言われて、拓也の誕生日だったと思い出した。
「少し遅れても良いよ。どうせ俺抜きでも平気だから」
光一はそう言って歩きだす。
「ダメじゃん帰らないと」
そう言ったのはyoshi。
光一が振り向くと、
「今日って智也のお兄さんの誕生日なんだろ?だったら早く帰らないと」
yoshiは覚えていたようだ。
「いや、大丈夫だよ、拓也は俺と話しもしたがらないし、居ても無視だよ」
光一は自分で何を言ってるのか分からなくなっていた。別にこんな事言わなくっても。
「なんか苦労してんだね。10代は大人ぶりたいだけで、本当は父親に居て欲しかったりするよ。俺も誕生日にお父さんが早く帰って来てプレゼントくれるの嬉しかったもん」
思い出を懐かしそうに、嬉しそうに話すyoshiにズキンとした。
胸が痛い。
yoshiが言うお父さんは自分じゃない。
「嘉樹…お父さん、好きなんだな」
つい、言ってしまった言葉。
「うん。好きだよ」
嬉しそうに笑うyoshiに胸が痛む。
バカだな。自分を自分自身で追い込むなんて。
「きっと、智也も智也のお兄さんもアンタを好きだと思うよ。だから、早く帰ってやらなきゃ」
慰めてくれてるのに、余計に心をえぐられる。
「ありがとう嘉樹」
光一は抱きしめたい衝動を我慢して彼の頭を撫でた。
記憶がない事と無知って時に残酷だと思う。
光一が一瞬傷ついた顔をしたのを豊川は見逃さなかった。
他人を実の父親だと思っているyoshiと、存在を忘れられた父親。
それと…友人の息子を抱こうとしている自分。
誰が一番残酷なのかな?
光一はyoshiに早く帰れと言われ家へ帰って行った。
いま、どんな気持ちで居るのだろう?
「明日も早く行くからね」
後部座席のyoshiの声で豊川は我に返る。
「いや、明日は休みなさい」
豊川はミラーでyoshiを見つめる。
「えー、どうして?」
不満そうな声。
「今日倒れただろう?明日1日ゆっくりしてないと、また倒れるぞ」
「そんな…今日たまたまだよ。今は元気だし大丈夫!」
yoshiがそう言っても心配なのは変わらない。
「僕も休んだ方が良いと思うよ。」
ナオに諭されるが、
「やだ!だって1人になるじゃん」
yoshiはむくれる。
ああ、確かに1人になるな。…豊川は電話でのyoshiを思い出し、
「じゃあ昼から来なさい」
と付け加えた。
「え~、朝からで良いのに」
yoshiは後ろからブーイングを起こしている。
その姿もまた可愛い。
彼らの住む家に着く。
ナオから再度お礼とお詫びを言われた。
yoshiは手を振ると家の中へと入って行った。
もっと話して行くのかと思ったのに、ナオが居るからだろうか?
ちょっと彼にヤキモチを妬く。
車を走らせようとすると携帯が鳴った。
手にすると、着信はyoshiから。
慌てて出る。
「なんだよタケルってば、朝早く行ったらまたイチャイチャ出来るのに!」
電話に出た途端にyoshiが拗ねていた。
電話をする為に早く家に戻ったのかと豊川は嬉しくなった。
「本当、嘉樹はエロいな」
クスクス笑いながら答える。
「タケルの方がエロいじゃん、って、本当は今夜マンションに行けたんだよね?」
「お預けだな」
「だから明日の朝!早く行くからタケルも早く出て来てよ」
わがままな小悪魔につい顔がほころぶ。
「分かったよ。早く行くから」
つい、そう言ってしまった。
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