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俺様生徒会長 榎原泰生生誕
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「オレ、榎原泰生が次の生徒会長になるんじゃねーの!!」
その一声で、周りのマツオカ科の生徒から黄色い歓声が飛ぶ。
特に『泰生様命』と書かれたハチマキをしている泰生親衛隊の発狂具合は同級生の松岡から見ても引くものだった。
(いつもはおしとやかで優しい子たちなのにな……)
満面の笑みでライブの観客と化した生徒に手を振るのは高等部2年スパダリ専攻ヒロスエ科、榎原泰生だ。
スパダリとはいわゆるスーパーダーリンの略でヒロスエ科の入試で全体57000人(ちなみに日本最高峰と言われる東大の志願者数のおよそ6倍)のうち上位40名から家柄、運動神経、容姿の審査をくぐり抜け一対一で学園長と面接し、残るのは10人だけ。
うちの学年のうち一人が彼だ。
いわく、「泰生さまは、頭がよろしくて何と6ヶ国語を操れるらしい」
いわく、「泰生様はいつも寮のトレーニングセンターで真夜中まで鍛錬を重ね、幻の1ダースパックを手に入れたらしい」
いわく、「泰生先輩の実家は代々ファッションを取り扱って、いずれ泰生さまも華々しくパリコレでモデルデビューを果たすらしい」
そんな根も葉もない噂が尾ひれに尾ひれをつけまくるような人。それが榎原泰生。
そして俺は、そんな榎原泰生が大嫌いだ。
いや、大嫌いというには語弊がある。正しくは”生理的にムリ”と言おうか。
あのように俺が俺がと言い過ぎる人はあまり好きではない。多分後輩とかだったら可愛げがあるようにみえるんだろうが、あいにく彼は同年代の同級生だ。可愛げの欠片もない。というか、あの体格の持ち主に可愛げを求めることこそがそもそもの間違いだと思う。190を超える長身。夜なべして作ったと思われる厚い胸板。男らしい野性的な顔立ち。
ヒロスエ科の生徒としては喉から手が出るほど欲しいものを入学当初から持っている将来を嘱望されたヒロスエ科のエース。
ああいう、俺様なやつは健気専攻の子たちが横に収まるんだろうな……
例えば……そうそうあんな感じの
目にとまったのは華奢な体躯をした黒髪猫っ毛の同級生、橋下潤。常時ぽわぽわしてて何かマイナスイオンがでてそうな癒し系。黄色い歓声をあげるでもなく真剣に泰生さんのスピーチを聴いている姿はさすがとしか言いようがない。
ちなみにその姿に見惚れて鼻血を出したちょうど10人目のヒロスエ科の生徒が外に頭を冷やしに出て行かされた。
おそるべし、マイナスイオン。
じっと見つめていてさすがに気が付いたのかキョロキョロと所在なさげに潤くんが辺りを見渡す。小さく手を振ると顔を綻ばせ、両手で恥ずかしそうに振りかえす。
あ、今ので記念すべき11人目がでたな。
そんなぽわぽわマイナスイオンに浸っていると
「おいっ!!!そこのてめえら!さっきっからごそごそごそごそ!何俺がありがてえ話してやってんのに無視してんだよ!なめた真似してんじゃねーぞ!」
キーーーーンッとマイクから悲鳴あがる。潤くんがピャッとかわいい声をあげ、それでまた12人目が出る。てゆーか泰生さんよ、あの出て行き組は良いのかよ。
大観衆の目線が俺と潤くんに集まり、それに気づいた潤くんが完全に涙目バイブレーションモードが発動してる。
そもそも潤くんはずっとあんたのためにもならないジャネばっか連呼してるスピーチ聞いてたじゃないか。
潤くんの加速するバイブレーションと比例するようにふつふつと怒りが腹の底から湧き上がる。
「そもそも、俺が潤くんに手を振っただけで潤くんはあんたのつっまんねえ話をずーーーーっと真剣に聞いてたんだよ!それよりいいのかよ?!潤くんに見惚れて退室してった12人くらいは!あれこそあんたのいうなめた真似だろ!」
勢いに任せて叫ぶと、泰生さんは顔を真っ赤にした後俯きクツクツと笑い出した。
しばらくした後、笑いすぎて過呼吸になったのか知らないが少し咳き込んだのち高らかにこう宣言した。
「気に入った!お前を俺様専属の副会長にしてやろーじゃねーの!!」
あちこちから阿鼻叫喚の声が上がる。特に左後ろの泰生親衛隊。
バイブレーション潤くんがガタガタ震えながら「どうしよう……このままじゃ松岡くんが変態科ボケ老人目の餌食に……」
まさに地獄絵図。そんな中 事の中心である松岡洋右ただ一人が、
「……え?」
台風の目のごとく一切何も理解していなかった。
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