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ケンカ
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きっかけは些細なことだった。ちょっと予定が咬み合わない、家でも仕事ばかりしている、生返事しかしない。きっと一つずつ見ていたら気づかないような、そんなこと。だけど、些細なことが積み重なってできた亀裂は気づかない間に驚くほどほど大きくなっていて。あいつはきっと、それに耐え切れなくなった。
「千秋、晩御飯ロールキャベツとハンバーグどっちがいい??」
「ん??んー。」
「...。」
急ぎの仕事が終わる頃には23時で、この家に春馬はいなかった。
「ハル??」
どこへ行ったのだろうか。買い物するには遅い時間だし、何より机の上には冷め切ったロールキャベツとハンバーグが寂しそうに並んでいた。
前兆ならあった。3日前からぼーっとしてることが多かったし、食べる量も少なかった。だけど、こんなことになるなんて思わなかった。
いつだって春馬は何事も笑って許してくれた。
だから今回だって、ちゃんと謝れば許してくれると思った。
「あそこ、かな...。」
春馬はなにかあるたびに近所の公園のブランコに膝を抱えて座っているのだ。俺は上着をはおり、春馬の上着をもって家を出た。
「...ハル。」
そう呼びかけると、案の定ブランコで膝を抱えていた春馬はばっと顔を上げた。泣きはらした真っ赤な鼻と目を隠すようにすぐ俯いてしまったけど。
「ハル、悪かった。」
ハルは、いつもみたいに笑っていいよって言うはずだった。少なくとも俺の中ではそうなるはずでだった。だから、
「...なにが?」
透明な表情で、感情の全くこもっていない声が返ってきたとき、思わずゾッとした。人事のように問う声にも、何も考えていないような表情にも。
「何が悪かったの?」
答えることは、出来なかった。俺は謝れば済むと思っていて、何が悪いのかなんて、考えていなかったから。
「...千秋は、僕は謝れば許すって思ってるんでしょ?だから、とりあえず謝っておこうって。」
無表情の春馬の頬を、涙が一筋転がり落ちた。
「どんな気持ちで許してきたか、わかる?嫌わないでってずっと思ってた。僕にはなんにもできないから、千秋についていこうって思った。何をされても、笑って許せば嫌われないでしょ?都合のいいやつって思われてもいいから、千秋のそばに居たかったんだよ...!?」
春馬の告白を、呆然と聞いていた。俺は自己中心的で、春馬のことなんてこれっぽっちも気遣ってなかったんだって、顔面を殴られたような気持ちだった。
「は、る...」
「千秋は...かっこいいしモテるから俺なんかいないほうが幸せになれるかもね。」
そう言われた時、怒りが湧いてきた。自己中心的で春馬のことを考えていなかった俺が確実に悪い。だけど、勝手に自己完結して俺から離れるみたいなことを言ってくる春馬にむかついた。
「い゛っ...」
細い手首を折れるほどに握りしめて、家に引きずって帰った。
嫌がる春馬をベッドの上に放り投げ、馬乗りになって手足を押さえつけた。
「や...や、だよ...」
乱暴に服を脱がせて、慣らしもせずに後孔へいきり立った欲望をつきたてた。
「ぐっ...あ、あ゛ぁっ...!!」
「お前さぁ、むかつくんだよ。何勝手に自己完結して俺から離れようとしてるわけ?そんなこと俺が許すとでも思った?」
「いた...いたい、千秋...!!」
ポロポロ涙を流す春馬なんて目に入らなかった。
「勝手に俺から離れるなんて許さない、」
パチン、と頬をぶたれた。ハッと正気にかえると怯えきった春馬が俺の下で小さく震えていた。
「あ...はる、」
「ぼ、くは...」
謝ろうとすると小さな声に遮られた。
「ぼく、は、千秋から離れない、よ...。千秋が、僕のこと嫌いになるまでは、はなれ、られないから...」
震える手を俺の頬に、何度もためらいながら伸ばして、両頬を包むと、小さく唇にキスをされた。
「すき、だよ...千秋が好き...千秋が望むなら、これから絶対怒らない。何でも笑って許す、だから...嫌いに、ならない、で...!!」
「...!!」
が、と後悔の念が押し寄せた。怒りに任せて春馬を傷つけた自分に、話も聞かず、勝手に思っていた身勝手さにも。
「ごめん、ごめんなハル...!!お前を傷つけたかったわけじゃないんだ、離れられるのが怖くて、...ごめん、話し聞かなくてごめん。全部、俺が悪かった。ハル以外いらない、本気でそう思ってるから。だから...お願いだから俺から離れていくなよ、ハル...。」
すがるような気持ちで春馬を抱きしめた。ずっとずっと、この体温に安心してきた。ちょっと低めの春馬の体温にいつも癒やされてた。あぁ...なんでこんな大事なこと、忘れてたんだろうか。
「ち、あき...もっと強くぎゅうして...。」
ぎゅ、と強く抱きしめると、春馬はせきを切ったように泣きだした。
「ふぇ...ち、あき、最近家に帰ってくるの遅いし、家にいてもパソコンとかスマホとにらめっこしてるし、ぼく、何もできないから、...だから、やっぱり女の人がよくなったのかな、て、おも、って...う...」
つまり俺は、春馬に大きな勘違いをさせていたわけか。
「ごめん、勘違いさせるようなことして悪かった。家に帰ってくるのが遅いのは今仕事が立て込んでて残業してきてた。家でも残った仕事しててそれの連絡取るためにスマホ見てた。」
「ほん、と...?」
恐る恐る、といったように上目遣いで見上げてくる春馬がたまらなく可愛くて、ちゅ、とキスをした。
「う、ぁ...」
ぽわ、と顔を赤くした春馬。かわ可愛すぎだろ、勃った。
「んっ、え、なんでおっきく...んあっ!!」
「可愛すぎるお前が悪い、ハルっ...。」
感じるところを優しくこすると、春馬はクッと息を詰めた。
「だめ、ぁ...千秋、んぁ...」
桃色に染め上げた肌をそっと擦るとそれにすらたまらない、といったように体をのけぞらせる春馬。とろん、と目を潤ませてキスをねだってくるところなんか、そんじょそこらの女よりよっぽどかわいい。なんで俺、こんなに可愛い奴のこと。放ったらかしにしてたんだろうな。
お詫びになるかわからないけど、俺は春馬の耳元で囁いた。
「春馬、愛してる。」
「ふあ、あぁっ...。ぼく、も...あい、て、る...。」
アイシテルの言葉を言い合えるこいつを、これからもずっと、愛していこうと胸に誓った。
Fin
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