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保健室
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それは、放課後俺が手を切ってしまい、保健室に行った時だった。
「先生ー、絆創膏もらえますか.....」
「.....ぁ」
ぇ、うそ。
あの人だ。やばい。初めてこんな間近で見た。
「怪我?先生なら今居ないよー、絆創膏だけもらっていっちゃう?」
一瞬びっくりした顔をしてたけど、その顔はすぐ笑顔に変わった。
.......なにこの可愛い人。
「ぁ、すみません。ちょっと指切っただけなんで、そうします。」
「指切ったの?消毒しない?」
俺が絆創膏の入った引き出しに向かうと、先輩もひょこひょことついてきた。
そんな可愛いことされると本当にどきどきする。初めて会った後輩にそんな事言うか?
「ゃ....大丈夫です。あんま痛くねぇし」
「だめだよ!見せて」
そう言うと、そっと手のひらを握られた。
人差し指からまだ若干血が出ていた。
結構深いけどこんなん何ともない。岸がうるさかったから絆創膏だけ貰いにきた。
「え、傷深いじゃん!やっぱり消毒しよう、おれがするからさ!」
何、この人心配症?
そう思うと、何か母親みたいだなぁと思って、少し笑ってしまった。
「....ふ、先輩心配症ですか?....してくれるなら、お願いします」
「ぁ、笑った?よかった。ずっとむすっとしてるから、おれ邪魔だったかなって思ってたの」
先輩はそう言ってふふ、と笑った。
初めて先輩を見た時みたいに胸が震えた。
こんな気持ちを知らない俺は、突然の事に頭がくらっとした。
「ほら、ここ座って?」
「はい」
ぐいっと腕を引かれ、ぽんぽんと消毒液のついた綿を押し付けられた。
「大丈夫?痛くない?」
「大丈夫です。こんな傷大したことないんで」
「そっかぁ」
そう呟いて絆創膏を指に巻いてくれた。
「はい、おしまい!」
「......ぁ、はい。ありがとうございます」
あぶねぇ。みとれてぼーっとしてた。
「じゃ、帰ろっか。おれももうすぐ出ようと思ってたんだ」
「はい。.....そうえば、先輩、なんで保健室いたんですか?」
そう聞くと、先輩は少し迷ってから「ちょっと貧血で」と苦笑いした。
貧血なんて女子みたいだな、と思ったけど、口には出さなかった。
「もう大丈夫だから!」
「そうですか。よかった。」
この人があんまりに笑うから、俺もつい笑ってしまった。
「....ぁ、先輩?」
「なぁに?」
保健室の扉に触れた先輩に声をかけた。
「名前、教えてくれますか」
心の中では、すごい緊張してたけど、ずっと聞きたかったことだった。
こんな事めったに無いだろうし、名前くらい聞いておこうと思った。
「いいよ!おれ、三澤 真南斗。....えっと、君のも教えて?」
教えて?って言いながら首をかしげられて、絶対少し顔赤くなった。俺こんな可愛い人初めてみた。まじで。
「三澤先輩.....、えっと、俺は櫻井 佑心です。」
「佑心か!いい名前だね、よろしくね」
「は、はい。よろしくお願いします」
名前で呼ばれて変に意識をしてしまった。
どきどきしながら笑顔を返した。
....よろしくってことは、これからも喋ってくれるってことなんだろうか。
そんな風に考えて、保健室を出ていく先輩の背を追いかけた。
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