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「つっ!!」
顔を赤くそめた彼は恥ずかしそうに
「綺麗なんてはじめて言われたから…。」
と小さく呟いた。
「なんかすいません、大丈夫ですか?すごく赤いですけど…?」
あまりにも赤くなってしまったものだから心配になってきた。彼は「大丈夫だ、すまない…。」と言って顔を手でパタパタとあおぎ、話を続ける。
「僕はね秋人、君を小さいときから知っているんだ。」
「それ、さっきも言ってましたね?どういうことですか?昔会いましたっけ?」
俺の記憶がたしかなら彼とは初対面のはずだ。それとも、記憶にないくらい幼いときなのか…。
「厳密に言うと会ったわけじゃない。ただ一方的に知っていただけなんだ。僕は僕の本体である本に触れなくてはみることはできない。でも、確かにこの家にいたんだ。そこの本棚にね。」
彼の指差す本棚はじいちゃんがお気に入りの本をしまうところで普段から「大切な本がたくさんあるから触らないでね」と言われていた。そのためその本棚には掃除の時も触らないようにしていた。
「義正は僕をみることができる人だったから、よく話をした。義正が出掛けるときはよく君を見ていてくれと頼まれたものだよ。」
笑いながら言ってはいるが、じいちゃんを思い出してか少し寂しさが混じっているように思うのはたぶん勘違いではないだろう。
俺はどこか遠い目をした彼をじっと見つめた。
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