アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
16
-
頬に雫がつたう。止まることのないそれは、床に一つ、二つとシミを作った。
手紙を持つ手に力がこもり、手紙にシワをつくる。
秋人は、静かに泣き続けた。
静まりかえった部屋には、時計の音だけが響いている。
どれくらいの時間がたったのだろうか…。
あたりはすっかり暗くなっていて、いつの間にか降りだした雨がガラスをつたって落ちていく。
秋人は、ゆっくりとその口をひらいた。
「じいちゃんは……。幸せだったかな…?」
「………幸せだったと思うよ。」
二人の声が静まりかえった部屋に優しく響く。
「義正は良く秋人の話をしていた。今日は学校でこんなことがあったらしい、今日は秋人がこんなものを作ってくれた、秋人の話をする時の義正はいつも笑っていたよ。心から幸せそうに…。」
また、瞳にまくができるのを感じた。次第に視界が歪んでいく。
「そっか…。そっか………。」
涙を流す秋人は笑っていた。
言葉にはあらわすことのできない温かい何かがじんわりと秋人の心を包んでいた。
「良かった……。良かった……。」
そんな秋人をサイカはそっと抱き寄せる。
彼の腕に包まれながら、秋人はきっと今も見守っていてくれている祖父にむけて言葉をつむいだ。
「じいちゃん、俺も愛してる。」
……雨はもう降っていない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 242