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61(カラス)
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目を覚ますと見知らぬ所にいた。
ふわふわした布に包まれた体には、包帯が巻かれていてほんのりと薬の香りがしている。
(どこだここ……なんで手当てされてるんだ?)
キョロキョロと周りを見渡すが、これと言って何もなく普通の家のように感じる。
(とりあえず、あいつらの仲間かもしれな
いし逃げるか…。)
カラスは逃げるために羽を広げようと体を動かす。
(いってぇっ!…………。)
傷ついた体は少し動かすだけで悲鳴をあげた。どうやらカラス自身が思うよりも体は傷ついているようだった。
あまりの痛みに動く事を諦めたカラスは、どうしたものかと考えるがうまい案がうかばない。
タッタッタッタッタ
タッタッタッタッタ
そうこうしているうちに、遠くから二人ぶんの足音が聞こえてきた。
もう一度羽を動かそうと試みるがやはり激痛が走りうずくまる。
(もうダメか……。)
諦めたその時、目の前の襖が開き日差しが一気に部屋へと入ってきた。
開いた襖の前にいたのは、黒髪の男と変な色をした男だった。
カラスは敵かもしれない二人を睨みつける。
黒髪の男はカラスを見るとなにやら驚きの声をあげ、変な色をした男の着物を引っ張っている。
それに対し、変な色をした男はとても冷静なようで、黒髪の男に何か言うとさっとカラスの目の前にやってきた。
警戒心を最大限まであげてかまえるカラス。しかし、カラスの予想に反して変な色をした男は何もしては来なかった。
それどころか、睨みつけるカラスに対して優しく微笑みながらこう言った。
「貴方を傷つける気はありません。もちろんあの子も。私はつくも神です、なので貴方の本当の姿を知っています。信用するかどうかはあの子と私をみてからで構いません。傷が開いてしまうのでどうか大人しくしていてください。」
(つくも神か……。)
カラスは、変な色をした男の顔を見つめる。
男はかわらず微笑んでいた。そこからはなんの悪意も感じない。カラスは自分の勘を信じることにした。
(こいつは大丈夫かもしれない……まあ、まだ完全には信用しないが……。)
カラスはとりあえず警戒心をとくと、返事の意味を込め「カァー」と一鳴きした。そして黒髪の男に視線をやる。
(黒……。)
変な色をした男より幼く感じるその男は、ゆっくりとこちらに近づいてきた。
最初は、変な色をした男の後ろに隠れていたがすぐにこちらに来て、カラスの体をそっと撫でる。
(あったかい……。)
優しく傷に触れないように丁寧に撫でるその男は、カラスの真っ白い羽に触れながらこう言った。
「痛くない?大丈夫?こんなに綺麗なのに飛べなくなったりしたら……。」
カラスは自分の耳を疑った。
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