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突然人の言葉を話し出したカラスに秋人は同様を隠せない。
「サイカさんっ!!この子今喋りましたよねっ!?喋りましたよねっ!?」
「そうだね。」
サイカは秋人の動揺っぷりに思わず笑いそうになるが、口元をおさえどうにか堪える。
「えっ?なんでサイカさんそんな冷静なんですかっ?!」
「いやー、なんていうか…同族というか……似たような似てないような位置にいる子だからというか…。」
サイカは、自分がカラスの正体を言ってはいいものかと言葉を濁し苦笑いをする。
チラチラとカラスに目配せをすると、カラスは諦めたような顔をして頷くと、秋人にその視線を向けた。
「そこの黒髪の男……。」
「えっ!俺のこと?!黒髪俺だけか!!」
秋人は、突然自分が呼ばれた事に驚きながらも、しっかりとカラスの瞳をみつめその後に続くであろう言葉を待った。
「黒髪の男…。突然驚かせてすまない………。」
「いやっ!!全然大丈夫だよ!!確かにまだ混乱してはいるけど……。」
「「人間」が俺みたいな生き物を見る機会なんてそうそうないからな……。混乱してしまっても無理はない。」
「俺みたいな生きもの?カラス…だけどまぁ、サイカさんの言葉からなんとなく察するに、普通の「鳥」ではないんだよね…。なんか神秘的というか…伝説の生きもの的な何かかな……?」
「さすがに、つくも神と一緒にいるだけあって察しがよいな。」
「うん、サイカさんでちょっと態勢がついたかな……っ!受け入れる早さは他よりはあるはずっ!!」
「そうか……。それなら話は早いな。俺はただの鳥ではないんだ……、「烏天狗」なんだ。」
「烏天狗っ?!烏天狗ってあの?」
「あぁ。」
秋人は実感がわかず、どう返事をしたらよいかわからずにいた。
目の前で人の言葉を話しているのは、まぎれもなく白い美しいカラス。
人の言葉を話すだけでも驚いたが、それに加えその正体は烏天狗だという。
本当なのかという意味を込めてサイカに視線やると、彼は黙って頷いた。
「っ?!そうかぁ~…!?でも、絵とかでみる烏天狗って顔がカラスで体は人みたいだったけど君は違うの?」
秋人の質問にカラスは小さく「あぁ…それは…」と呟く。
「それはちょっと違うというか…そういうやつもいるというか……俺は顔も体も人に近い。違うとすれば翼があることだ。そして今は体力を回復するために消耗の少ないこの姿をしている。体力が戻ればすぐに本来の姿に戻る。」
「じゃあ、今はまだ体力が戻ってないんだね…そりゃそんな傷だし。」
「あぁ、、。そうだ、手当てをしてもらったこと感謝する。本当にありがとう。」
「俺はなんにもっ!?サイカさんの薬のおかげなんだよっ!」
秋人は誇らしげにサイカを見つめる、サイカは少し照れくさそうに頭をかいてカラスに説明する。
「けっこう酷い傷だったけど、持ち前の回復力の早さからか君を見つけた時には血はほとんど止まっていたよ。きっと羽の下には打撲傷があるだろうからあまり激しく動くのはおすすめしない。今はゆっくりこの家で休むといいよ。」
サイカは微笑みながらそう言うと、秋人に「いいよね?」ときいた。それにたいし「はいっ!もちろんです!」と秋人は答えるとカラスに向き直り笑顔で彼に質問する。
「カラスさん、名前はなんて言うの?」
「名前?名前なんてない。」
「えっ?!烏天狗には皆名前がないの?」
「いや、俺にだけないだけだ。皆俺を「おまえ」とか「おい」とかって呼んでたから」
たんたんと答えるカラスの様子に、秋人は固まってしまう。
(名前…つけてもらえなかった……?)
秋人は思わずサイカの顔を見た。サイカはとても悲しそうな顔をしていて秋人は自分の考えが間違っていないのかもしれないと思いより悲しくなる。
(どうして……。)
なんでもない事のように言ったカラスに、秋人はやるせない気持ちになりながらあることを思い付いた。
「ねぇ、カラス君……。」
「なんだ?」
「もし、嫌じゃなければ俺が君に名前をつけてもいいかな…?」
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