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馴れ初め 7
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何回か2人は、そうやって一緒に人間(ひと)の地へ行き、同じようにして血を飲んだ。
そんな、ある時、ヒュウはクァナに言った。
「なぁ、俺と時を渡らないか?」
驚いて返事のできないクァナにヒュウは続けた。
「クァナが女としか一緒にいたことがないのは知ってるし、いきなりで驚かせたと思うけど、俺はお前といたい。だめか?」
「…えと…」
今、ヒュウはなんて言った?
時を共に?
言ったことはあるし、言われたこともあるけど、それは全部異性とで。
あれ? 僕が男って、ヒュウは知ってるよね?
ヒュウは女じゃないよね?
「まぁ、男から言われんの初めてだろうし、分かんねぇよな」
クァナが混乱して何も言えないでいる間、ヒュウも無言で何やら思案していた。
2人とも黙りこくったまま時間は過ぎ、しばらくしてヒュウが唐突に沈黙を破った。
「じゃ、試しにってのはどうよ?」
「?」
ヒュウはしっかり頷いたが、クァナはまだポカンとしている。
「時を共に渡る者になるのは、まぁ、試してみて後から考えりゃいいじゃん」
「試すって…何を?」
「相性」
ますます首を傾げてしまうクァナ。
「お前、男とは口付けもしたことないんだろ?」
「うん、無い」
「なら、確かめてみりゃいいじゃん。出来るか出来ないか。気持ちいいか悪いか」
のけ反るように固まってしまったクァナを見てヒュウが噴き出し、肩を震わせた。
「そこまで驚くことねぇだろ」
「だって」
「嫌ならしないさ。無理強いはしない」
まだ笑いを止められないまま、しかし穏やかにヒュウは約束した。
「どうする?」
困っていると、ありありと分かる表情でクァナはしばらく考えて、それからぎこちなく頷くと、途切れ途切れに答えた。
「…うん…試して…みる」
男同士は確かに珍しいけど変だとは思わない。
自分は未体験だけどヒュウはそうじゃないようだ。
ヒュウのことは嫌いじゃない。
そうやってクァナが思案している間、ヒュウは何も言わず彼を見つめていた。
迷うのは当然だし、躊躇するのも当然。
断られるのも想定内。
だから、クァナの返事は嬉しかった。
「触っていいか?」
クァナの頬すれすれに伸ばされた手に、ヒュウの言っている意味が分かってクァナは頷いた。
そっと触れたヒュウの手は大きくて、骨ばっていて、でも、優しく包み込むよう。
「嫌じゃないか?」
「う、うん」
「無理すんなよ?」
「大丈夫」
「嫌だったら、すぐやめるからな?」
「うん」
クァナは近付いてくるヒュウの顔をまじまじと見た。
あの唇が僕のと…。
そう考えると恥ずかしくて、クァナは目を伏せた。
そして、ヒュウの唇が自分の唇に触れるのを感じる。
ゆっくりと押し当てられ、すぐに離れた。
「大丈夫か?」
「うん、嫌ではなかった」
「じゃ、もう1回、いい?」
再度、唇が重ねられる。
先程より長く、ゆっくりと。
「気持ちいい?」
「わかんない…」
嫌ではなかった。
ヒュウの唇は少し乾いていて、少し冷たくて、でも、違和感は無くて、だけど、気持ちいいかどうかはまだ分からない。
どうなんだろ?
さっき言ってた相性ってやつは。
「嫌じゃなかったんなら、ま、いっか」
ヒュウはそれ以上何もしなかった。
焦る必要は無い。
ゆっくり確実に。
ヒュウはそう考えていた。
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