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絵の具のように、俺達が混ざり合うことができたなら、ずっと永遠にお互い綺麗なままでいられたのかもしれないのに。
斎藤緑ー。みどりちゃん、みどりくん。
自分の名前は女の子みたいで嫌いだった。
小さい頃から、名前だけで女の子と間違えられ、みどりちゃんとよくからかわれたものだった。
大学生になった現在でも男らしい容姿に似つかわなく、コンプレックスである。
親に何度か愚痴たことがあったが、その度、森の象徴である若々しい凛とした優しい「緑」のような人になってほしいと願いをこめたときかされた。少しだけ大人になった今は、諦めに近くこの名前と一生付き合うものだと思っている。流行りのキラキラネームでもないし、随分マシな方だ。
今日の大学の講義を終え、帰宅しているところだった。
母親が薬剤師ということもあり、自分も薬学という道を進んだ。6年制で尚且つ単位も落としたら留年である。学費も高いため、適度に学生生活を楽しんで勉学に励んでいた。県外の大学に通っているため、下宿している。とはいっても、一人暮らしではない。
高校からの付き合いの友人と暮らしている。
「ただいま」
部屋は、小さなアパートの3階の北部屋だ。
太陽の光がはいらず、いつも薄暗い。
玄関先には、自分より少し小さめの奇抜な蛍光色の赤い靴が転がっていた。
あぁ、あいつがいる。それだけで安心した。
田舎のアパートなため、家賃も安く、部屋は広めだ。自室もきちんとある。いつも嗅ぎなれた、鼻をさす、つんとした独特の匂いを胸いっぱい吸った。
リビングの扉を開けると、あいつがいた。
「おかえり、みどり」
少しハスキーな大好きな声。
自然と頬が緩んだ。自分は、178と高身長であいつは小さくはないが170センチと、自然と見下ろす形となる。
あいつは、俺に両手をさしだした。手でなにかをくるんでいる。
「ん、みどり、お土産だよ」
あいつは、花も綻ぶようなけれど少し意地の悪さがはいった俺の大好きな笑顔を浮かべて、ゆっくりと手を開いた。
そこには、一匹の小さなミドリガメが顔を覗かしていた。
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