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悠斗は、きいろが好きだった。けれど、それは恋愛とはまた違う感情だった。
自己投影をきいろにし、自らを愛しているようなものだと思う。
悠人は、造形コースで陶芸を専攻していた。父親が陶芸家で、厳格で仕事一筋の人間だった。そのせいで、中学の時、母親と離婚した。父親は、いつまでも自分の作品を認めてくれることはなかった。確かに未熟で技術もまだまだ足りない。けど、母親にも父親にも置いていかれたような、見放された気がした。
大学にはいってからも、友人など出来ず、そんなものはいらないと自ら孤独を選んでいるつもりでいた。なにもかも上手くいかない。学内の毎月開かれる展示会で、自身の作品は地味な湯呑み。ぽつんと置かれた少し歪な白い湯のみを見つめると、虚しさだけがこみあげた。
そんなとき、きいろと出会った。あいつは、自分が造った湯のみのまえで突っ立っていた。
恐ろしいほど顔が整った綺麗な男だった。
思わず、見惚れる。
「俺の手には大きすぎるな」
そいつは、つぶやいた。
普段なら絶対話しかけないのに、なぜか自ら
声をかけた。
「いまなんて?」
そいつは、驚くことなく、うーんっと唸っ
た。
「大きすぎない?これたくさん、お茶が入って素敵だけど、持つのに疲れちゃうよ」
「それ俺が造ったんだけど」
悠斗は素直に名乗った。
すると、彼は目の前にいる人物が造った本人だと知ると、困ったように謝ってきた。
「あまりにデザインが素敵で譲ってもらおうと思ったけど、俺手が小さいから飲み辛いかもと思って」
そいつは、絵画コースを専攻していると言っていた。不思議な雰囲気を纏っていて、妙に惹かれた。
「俺の作品、できそこないなんだ、見て」
彼は悠斗の手をひいてあるパネルのまえに連れてきた。
「課題の展示だったから。俺、人物画描けないのに。ほら、変でしょ」
指で示された絵を見つめる。確かに彼の絵は、周りと違って浮いていた。どこもかしこも、丁寧で色使いも肌質や、皺などよく描かれていた。けど、表情が抜け落ちていてどこか不安になる絵だった。
「ねっ!笑えるでしょ」
きいろは、ゲラゲラと笑った。そんなきいろの笑いが移ったのか、久々に笑いがこぼれた。
「俺、きいろだよ。お兄さんは青木さん?」
ひとしきり笑うと彼はそう名乗った。
「悠斗でいいよ」
きいろは、一つしたの学年だった。
きいろは、誰もいない展示室で悠斗の首に腕を回した。驚くほど綺麗な茶色い瞳に見つめられて動けなくなる。
「悠斗、寂しいでしょ?よかったら、俺で寂しさを埋めない?」
きいろと関係をもちだしたのは出会ったすぐ直後だった。
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