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1週間と休んだきいろをクラスメイトは心配そうに声をかけている。
きいろは、へらへらしながら「池に落ちて風邪をひいた」と答えていた。
そんなきいろを遠くで眺める。きいろは、昼休みも近くにいるのに何も話さなかった。
みどりは、放課後部活を休んできいろのうちへと行った。サボったことに対してきいろは不満そうだった。
きいろは、無言だった。沈黙がひどく怖い。
なにも喋らぬまま、きいろの家の前に来ていた。
「みどりがまさか家に来るなんて想像もつかなかったな。汚いけどどうぞ」
きいろはドアをあけた。そこには、昨日の惨状とは打って変わって綺麗な部屋だった。
あれはやはり悪い夢だったのだろうか。
いや、そんな筈はない。
きいろは、声を絞り出して言った。
「平和なんだ。俺の家族。笑いあって、絵に描いたような幸せなッ」
きいろは顔を歪め、肩が震えていた。
「あれ、言葉にでてこないな。みどりの家みたいに喧嘩してッ..休日は外食したりして、あれっ、なに話すんだろ..ごめん、幸せすぎて分からないや」
しゃがみこんで泣くきいろ。俺はきいろを抱きしめるしかなかった。
「...みとめたくないんだ。俺はひとりだって。俺はきちんと愛されてるって、おかしくないって」
きいろは、ぼろぼろと泣いていた。震える肩を強く抱きしめる。きいろの苦しみがどれほどのものかと思うと胸がきりきりと痛んだ。
「...うっうっ。俺、片親なんだ。唯一の家族なんだ。俺がッ..俺がいなきゃッ...」
俺は、きいろの父親に憎しみを抱いた。
きいろの涙を指で拭い、抱きしめる腕に力を込めた。
「ごめんッ!!俺が、俺があのとき助けなきゃいけなかった。本当に俺ッ…」
咽ぶように謝罪を続けた。
きいろは、目を真っ赤にしながら言った。
「みどり、泣かないで。みどりは悪くない。慣れたことなんだ。大丈夫だから」
俺は、もう逃げたりしない。絶対に。
「きいろを苦しめるものは俺が全部取り除くよ。俺、おれ、きいろのためならなんだって」
きいろは、俺から体を離した。
「それ以上言わないで。誰にも。俺は大丈夫だから。あの人も寂しいだけなんだ。みどりは、忘れて。なにも知らないまま、俺のそばにいて。誕生日の日に、頷いてくれたじゃないか」
きいろは残酷なことを言う。きいろの鼻をすする音だけが静かに響いていた。
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