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約束の時間は一時だった。
こことは少し離れたカフェで会うことになっていった。
みどりは、早めに到着し、コーヒーをまた頼む。本日二杯目のコーヒーは少し苦かった。
「・・・こんにちは。」
声をかけられたほうをみると、白髪まじりの痩せこけた中年の男性がいた。黒色のシャツにくたびれたジーパンを履いていた。
俺は立ち上がり、挨拶をする。彼はきいろの父親―月島慎二だった。
店員がオーダーをとりにくる。彼は、同じようにコーヒーを頼んだ。
「今日は、急に時間をつくってくださり、ありがとうございます。…お久しぶりですね」
彼は、無表情で俺をじっと見つめた。その目はきいろと違い、真っ黒だった。
きいろと父親は全く似ていない。
「…あなたが出所したのをきいて、あなたに会わなきゃと思ったんです。」
「…あいつは…あいつはどうしてる?」
月島は、掠れた小さな声で喋った。
「きいろですか?きいろ、あなたの出所をきいて会うことは一生ないと言っていましたよ。もうあなたから受けた傷は癒え、洗脳は解けている。だからあなたも変な気を起こさないでください」
一気にまくし立てた。
「…あいつが俺を忘れて会いにこないわけない。そもそもきいろは俺に洗脳などされていない。あんたが…あんたがそうやって俺達を引き離したのだろう。どうせお前はきいろに話していない。俺のことを。お前が今度はきいろを支配するのか」
彼は、薬物でぼろぼろになった歯をのぞかせた。ひどく汚らしいと思った。俺は自然と足を揺すっていた。
「あなたはきいろを自分の妻と重ねて禁忌を犯したんです。あなたにはきいろに会う資格などもうもっていません。」
「あいつも俺も狂っている。お前もだろ?お前があいつに向ける感情はいずれあいつを苦しめ、お前を変えてしまうよ。お願いだ、きいろを返してくれ。あいつは俺のものだ。あいつは、昔から汚れた娼婦のようなものだよ。あいつは、葵の皮をかぶった化け物だ。」
月島がいう葵は、きいろの亡き母親だった。
「…あんたのほうが化け物だよ。俺もきいろも歩み始めたんです。あんたは…もう消えてくれよ!!約束しろ、もう関わらないと」
「きいろは、絶対に俺に会いに来る。俺が会いに来ずともな。お前が隠している秘密もいずれバレる。それを恐れているのは斎藤みどり…お前だろ?」
心が黒い雲で覆われるようだった。
月島は最後にこう言った。
「お前も俺も、そしてきいろもみんな狂っているんだ。仲良くしよう」
そう笑い出す男に、俺は千円札を叩くように置き店を後にした。
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