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「こらこら、からかうのをやめなさい。一星遅いわね。先にご飯にしちゃいましょうか」
そう言って、志穂子さんは冷蔵庫からワインを取り出した。
「お口に合うか分からないけど、フランスのワインだよ。口あたりがよくて飲みやすいと思って」
赤江先生は、嬉しそうに言った。
「こんなワイン俺たちには手が届かないです。いただきます」
みどりの目の前のグラスに暗い赤色が注がれた。ワインレッドとはこの色か。いつしか、きいろが言っていいたことを思い出す。色よりも先にワインが先に生まれたのかと問われた。俺は知らないと言った。そもそも、赤色に何種類もあることが大変だなと思った。
五つのグラスにワインが注がれた。綺麗な色だった。
「みどりくんも、きいろくんもお酒飲むの?僕、好きなんだけどね、下戸なんだよね。母さんも弱いし、強いのは父さんと弟だから」
俺は、今までハメを外したことはないし、おそらく強い方なのだろう。きいろは、そんなに強くない。
「僕は、飲める方だと思います。きいろは、あんまり強くはないよね」
きいろは、ワインよりも目の前のビーフシチューに釘付けだ。
「家内は全く飲めないし、駿もヒヨッコだ。一星は仕事柄あまり飲めないし。今日は、みどりくん仲を深めようね」
みんなで、乾杯する。ワインは、上品で飲みやすかった。
「志穂子さん、いただいていいですか?」
「丹精込めて作ったからたくさん食べて頂戴」
そう言って、志穂子さんは笑った。
きいろはいただきますと言って、ぱくぱくと食べた。きいろは、家ではぼろぼろとこぼして食べるのに、みたことがないような綺麗な所作で食べた。
志穂子さんのビーフシチューはお肉が柔らかく口で溶けた。鮮やかなサラダはきいろの口にどんどん消えていった。
「すごいな、きいろくん、そんな細っこいのによく食べるね」
感心したように、駿さんは言った。
「美味しいからです」
率直でまっすぐすぎて気持ちのいい返答だった。
「みどりくんも、美学生なの?」
駿さんに問われて首を振った。
「僕は、ただの薬科生です」
「おお、すごいな。毎年、試験きついだろ。将来MR?それとも病院とか薬局勤務?」
「まだそこまでは考えてないです。けど営業とか向いてなさそうです」
きいろは、横でひたすら料理のしていた。
「もし、あれなら僕の勤務先来てくれよ。薬剤師不足しててさー。ま、MRでもみどりくんが営業にきたら、接待楽しみにしてるわ」
そう言って駿さんは笑った。
「駿は、本当昔から不真面目というか、のほほんとしてたのに、勉強だけやたらできてね。なんかよく分からないけど、お医者さんになってて、夢でもみてるようだわ」
「失礼だな、母さん。僕には勉強しか取り柄がないみたいじゃないか。確かに、全くもってスポーツも音楽も絵も無理だったけどね。好きなこともこれといってないし」
赤江先生に、好きなことはなに?問われた。
考えてみたけど、咄嗟に思いつかない。化学式ー、サッカーとか色々あるはずなのに、思い浮かぶのは隣でムニエルの骨と格闘している人物だった。
すぐ汚す服の洗濯、作ったら絶対たべてくれる料理、化学式の本をみてアインシュタインだねって真面目な顔をするきいろ。
「サッカーとか。あと家事も好きです」
「サッカーか、やる方?」
「はい」
「きいろくんは?なにがすき?」
ムニエルの骨を綺麗にとったきいろは顔をあげて言った。
「ピーナッツ!」
みんな一瞬目を丸くした。意識してなかったがムニエルにはピーナッツが乗っていた。
きいろはどこまでも自由だ。
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