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「一星、遅すぎるわ。みんなもう食べちゃったわよ。こちらは、斎藤みどりくん。薬学生さんよ。ご飯あたため直すから座っときなさい」
みどりは、自己紹介をし、頭を下げた。志穂子さんは、台所に向かった。
彼は、顔立ちがはっきりしていて、男前だった。赤江先生に似ている方だろうか。
「仕事で遅くなっちゃってね。なんだ、一星もう潰れてるのか。相変わらずだな。ワインなんか飲むからだ」
そう言って呆れたように笑う。
「親父は?あと、もう一人来てるって聞いたんだけどその子は?」
「きいろって言うんですけど、赤江先生のアトリエに行ってます」
きいろ?と言われて彼にはハテナが浮かんでいるようだ。
「名前変わってるんですけど、きいろって言うんです。」
俺がそう言うと納得したようだった。
「じゃ、ふたりは合わせるときみどりだな!面白いな。みどりくん、お酒いける口?二人が戻るまで呑もう」
俺がお酒に強いということを告げると嬉しそうに、席についた。
志穂子さんがもってきた料理を前に手を合わせる。
「美味そうだ。けどオカズだいぶ少ないね」
彼は、冷蔵庫からビールを取り出すと二つのグラスに注ぎ、手渡してくれた。黄色の液体上に浮かぶ泡が綺麗だ。
「じゃ、遅れたけど、出会いに乾杯」
一星さんと乾杯をした。
一口飲むと、よく冷えていて喉ごしがいい。
「俺ワインとかより、やっぱビールが好きだわ。うまいよな」
そう言ってくしゃっと笑う一星さんは、モテるのだろうなと思った。
「俺さ、公務員だからあんま定時に終われなくて。激務の毎日。今日は早く終われたほうなんだ。」
くわしく聞くと、彼は刑事で警察署に勤務しているそうだ。
「みどりくんは、薬学生か。将来、悪いクスリじゃなくて、良い薬でたくさんの人を救ってくれよ。俺もさ、まだまだ未熟だけど、少しでも多くの事件を解決して、役立ちたいんだ」
そう言う彼はひどく眩しかった。このような志の高い人間には一生なれそうにない。
薬物ときいて、浮かぶのはきいろの父親のボロボロの歯だった。
彼といろいろな話をした。昔、不良で補導された時に、涙を流している母親と、頬をぶって怒った父親の姿をみて改心し、警察を目指したそうだ。
絵画に夢中で世界中を飛び回り家を開ける父親を軽蔑し、自分と違ってなにも考えてなさそうな癖に全国模試で上位に名を連ねてきた兄を僻んでいて荒れたと言う。
けど、全力で怒り、自分と向き合ってくれた父親の姿をみて、自分はひどく無知で愚かだと悟ったと言った。
そのような話を隠しもせず、笑顔で話す彼は、堅苦しそうな刑事とは違って、好感がもてた。
「ま、いまになっても、普通に時間ができたら遊ぶさ。俺、熱血だからさ、休日は近所のガキとサッカーしたりすんの」
彼はキラキラしていた。
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