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赤江のアトリエは地下にあり、地下そのものがアトリエになっていた。
きいろは、先生に連れられ、扉の中に入った
。
薄暗く光のない部屋。画は、光にあたると傷む。しんと静まり、ひんやりとしたアトリエには赤江の今までの作品が並んでいた。
茶色い椅子の前にイーゼルの上に布がかけられたキャンパスがあった。
「すごいですね。換気設備とか、照明とか、道具も。」
きいろは、しげしげとそれを眺めた。
「時たま、このような薄暗いとこで作業をすると寂しくなる時もあるよ。少し寒いね、ヒーターをつけよう」
赤江はきいろと違って、人物画もよく描いていた。
「そうそう、きいろくんが言っていたようにみどりくんは君を形成する一部分なんだね。しかも、大半を占めている。君というものが分かった気がするよ。君が描いた、今回出展する作品ー、あの絵に僕は非常に感銘を受けたよ。キャンバスは小さかったけど、魂が込められてるね。制作日数は?」
「およそ2日です。自宅で描いたので」
きいろは、描けない時は全く描けない。けれど、あの日はすぐに描くことができた。完成させたあとは、空っぽになってしまった。みどりがいなかったらなにも食べていないだろう。
「君が大事に思う気持ちが伝わってきたよ。きっと、いい画展になるだろう。ありがとう」
きいろは、素直に嬉しかった。
「お願いがあるんだ。きいろくん。僕は今とってもスランプでね。今日も、なにかのきっかけにと思って君たちを招待したというのもあるんだ。これをみて欲しい」
赤江は、目の前の大きなキャンバスにかけられた布をとる。
そこには、花に囲まれる天使の絵があった。下書きの段階なのだろう。木炭で描かれたそれには、明暗の世界だった。
「僕は宗教画やステレオ的な天使に囚われたくないんだ。けれど、どうしても天使が描けない。それは、みたことがないからだと諦めを感じていた。けれどね、実は間近にいたのだと気づいたんだよ。お願いだ、きいろくん。君を現代の僕の思う天使として描かせてもらえないかな」
きいろは、考えた。自分は全く天使などではないと。けれど、先生の役にたちたい気持ちもあった。
「僕は、うんちもするし、おならだってする。それに、身体に傷もあるんです。そんなかけ離れた僕でもいいんですか?」
「君しかいないと考えているよ」
きいろは、頷いた。
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