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「あの木の所まで行こうか」
公園の真ん中にシンボルのように植えられている大きな木を指さしてから、圭がこちらへと歩いてくる。
目を凝らしてよく見てみると、太い枝からロープが一本ぶら下がっているのが見えたから、震える声で「殺すのか? 」と尋ねると、「どうかな」と答えた圭に腕を掴まれそうになった。
「ムリ、ムリだから」
掠れた声をどうにか絞り出し、未玖はとうとうここから逃げ出す決意をする。
前々から怖いと感じることは度々あったけれど、自分に向けたものでなければ、それすら憧憬に変換された。
だけど、これは駄目だ。
怒った圭の容赦のなさを知っていたのに、なぜ自分だけは大丈夫などと安易に思ってしまったのだろう。
「無駄だ」
咄嗟に走ろうと試みたけれど、すぐに舎弟に取り抑えられ、ならば大声を出して助けを呼んでやろうと考えたが、実行する前に唇を布テープで塞がれた。
「ん…… ぐぅっ」
―― あんなこと、するんじゃなかった。
引きずられるようにして、木の前まで連れて行かれる間中、愚かな己の行動を悔いたが、もう全ては過去のことだ。
そして、たぶん未来はもうすぐ断たれる。
ぶら下がっているロープの片端を手にした圭が、それを首へと巻き付けてきて、殺されるのだと思った未玖の瞳から涙が溢れだした。
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