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大切なもの
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「ただいまー」
『おかえりー遅かったやん、なんしよったと?』
母が洗い物に集中しながら、いつものように声をかけてくる
「いやーなんもなかよ」
そんな母の言葉を空回りで返事をし、
俺は玄関に上がったや否や、靴を適当に脱ぎ捨てて階段をドタバタとかけ上がった。
その音に、母がひょっこりと顔をだした
『もーうるさかよー、家が壊れたらどうすると』
笑い混じりの口調でそう言った母の 言葉に小さく腹をたてた俺は、それに対して反抗した
「うるさい!母さん絶対に部屋に入ってこんでね!」
バンっ!!!
『元気やねー、部屋に入ってこんでって…年ごろなんやね…ふふ』
********
(はぁ…)
力が抜けるように ドアにもたれかかった体はすっかりと地面に落ちていく
最近どうも反抗期にはいってきたのかもしれない
じゃなきゃこんなにいじめだってエスカレートしないし、母に対してこんなにイライラしないだろうし。母さんのことはともかく、学校でのことは俺は悪くないのに…
どうせ母さんは、小さい反抗期とか思って笑ってるだろうな……
「はぁ」
(あ、そういえば!)
ハッとなった俺は、ズボンの右ポケットの中をあさくった。
さっき拾ったキーホルダーがなぜか気になって仕方ないのだ、
もしかしたらとても高貴な女の人のものかもしれないし…
俺は盗んでしまったかのように罪悪感を少し感じてしまったが、これは拾ったもの勝ち。落とした人が悪いんだ、と思ってしまった。そんな自分に少し尊敬するようで嫌気がさしてしまったが、それにしても……目が釘付けになってしまう。
とにかく透明で透き通った小さなダイヤがたくさんちりばめられていて、素材がすべてそのダイヤでできているようだ。
無駄な色もなくてそれに……
「ん?なにこれ?」
一つ大きなダイヤのようなものがあるのだがどうやらそれはひらけるようだった。
それには俺も今気付いたのだが、ともかく開けてみようと思い、開けようとするのだが中々開かない…
(なんで?力いれてるのにあかないんだろう)
「ぐぬっ!」
何度も開けようと試みたのだが結局何時間経ってもそれは開けることができなかった、
ともかくこれはどうしようもなかったのでどうせならと思いなんとなくランドセルの横にそのキーホルダーをつけてみた。
「やっぱにあわないや、はずそ」
ランドセルに手をかける
『さなーごはんよー降りてきて』
その瞬間一階から母さんの声が聞こえた、
(後ではずそ)
「はーい、今いく」
返事をした俺はキーホルダーをそのままにして一階へとかけおりていった。
~~~~~~
*****
キーンコーンカーンコーン
学校の放課後
あれから数日がたった。結局キーホルダーはそのままランドセルの横につけたままでいた。それにずっとつけていればなにげに違和感も感じなくなっていたから外すのも面倒だった。
いつのまにかそれは俺にとって大切なものになっていた
こんなキーホルダーを気に入ってしまうなんて乙女なのかな俺は…
校門をでて、しばらく歩くと他校の小学生が何人かちらほらみえてくる。
白いランドセルに制服を来た小学生が多い。ちょうどその小学校も下校時間だったみたいだ。
それにしてもみんな賢そうな人たちばかり……でもその集団のなかでふと目がとまった
(あの人ってこのまえ道端で…… )
数日前、俺が歌を歌っているところをみていた人だ。
横断歩道をわたっているその子の回りには友達なのだろうか、大勢の男女が囲っている、楽しそうに話をしているようだ。
そんな姿をみて、思わず背を向けるのだが、ふとまた後ろを振り返ってしまった
思わず目があってしまった…
相手も俺に気づいて目を大きく開く。
その瞬間その人は猛ダッシュで俺を追いかけてきた。
そのひとの回りにいた子達もそいつのいきなりの行動に唖然としてしまっている
「え、え!なになに!」
なんで追いかけてくるのかわからなくて、とりあえず怒ってるとしか捉えることができない!
(よし!逃げよう!)
とにかくその場を離れようと俺は走り出す。
*****
「はぁはぁはぁ…」
路地のいりくんだ道を利用してうまく逃げ切れたようだが…あのまま大通りで逃げていればあいつの足の速さではだんぜん俺は捕まっていた。
とにもかくにもこんなに走ったのははじめてだったから疲れてしまった
汗だくになっていた俺はすぐ近くの段差に腰を下ろした
『おーい』
上から声がする…まさかとは思いなんとなく上を見上げるとそいつは不気味な笑顔を浮かべながら他人の民家の屋根からひょっこりと慣れた様子で飛び降りてきた。
「っひ!」
怖すぎるこの子…爽やかとは思えないほど恐怖を感じてしまった。
すぐさま、俺は立ち上がりさりげなく後ずさりをした
『あ、君この前歌ってた子だよね』
今気付いたのか…それにしては気づくの遅すぎるとは思ったが…じゃあなんで追いかけてきたんだろうか
「っ…なんだよ、じゃあなんで追いかけてきたんだよ」
『そのキーホルダー返してほしいんだ』
キーホルダーって…
このランドセルにつけている物のことであろう。でも俺は簡単には返すことができない…だって本当に自分のものだって言う証拠がないと納得できないからだ
「……」
俺はそれを隠すようにランドセルの角度をわざと見えないようにずらす。
それにあきれたような表情をしたそいつは軽くため息をついた
『…わかったよ…』
そう言って、にっこりと笑うと俺に手を振った後に背を向けてそのまま来た方向を辿って戻っていってしまった
それだけなのか…??
逆にもっとなにか言うかと思ったのだが…だってあれほど必死に追いかけるほどなのだから…
でも理由がないのなら同じだ
なおさらこのキーホルダーを渡すわけにはいかない。
そんな無邪気な子供らしい、意地をはる自分の姿が今思えば、なんてバカなやつなんだろうと思える
それほど大切なものなはずなのに…
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