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異世界からの訪問者
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とある会社で働き始めて早5年。
事務仕事や雑用を押し付けられても、
“はい”と返事をしていれば平穏に過ごしていける。
それが四十数年生きてきた僕がたどり着いた答えだ。
おかげで定時を大分過ぎてから会社を出ることになってしまうのだが、特に用事もないので決して不満ではなかった。
何の喜びも、何の悲しみもない日常。
家に着いたらベッドで眠り、朝が来たら会社へ向かう。
休みの日は掃除をして買い出しに行き、日が暮れるのをただひたすら待って。
こんな日々が明日も来年も十年後も、
ずっと続くのだと思っていた。
今この瞬間までは。
「あの…、大丈夫ですか」
自宅の扉の前で、頭を垂れて座り込んでいる人に声をかけると その人はゆっくりと顔を上げ嬉しそうに笑った。
「アンタ…俺が見えるのか」
綺麗に並んだ歯のなかに一本だけ生える牙に、ゾッとする。
銀色に染まった髪と吸い込まれそうなほど真っ黒な瞳。
この世のものとは思えない形態に 思わず唾を飲んだ。
「なぁ…頼みがあるんだけど」
スッと立ち上がった男は僕を見下ろし、
何秒かの沈黙の後 口を開いた。
「アンタの精気、くれない?」
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