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なんだ、其処に居たんじゃないか。
全く意地の悪い事をする。
創は、ずっと其処に居たんだね………。
僕はボロボロの体をゆっくりと起こし、窓へ………いや、創の元へ向かう。
「創………逢いたかった」
僕は今、泣いているのだろうか。
「ずっと、ずっと………逢いたくて仕方がなかったよ」
僕は今、笑っているのだろうか。
………わからない。
わかっている事は、僕は二階の窓から転落し頭を打ち付けた所を蒸気自動車に轢かれ死んだという事だけだった。
僕の遺体は誰に死を悼まれることもなく、哀しまれることもなく、ゴミと共に焼却炉で焼かれた。
春の、桜が満開の時期の事である。
僕は、死んだ。
1912年………この年の7月、この明治という時代は終わりを告げる。
けれどもそれは、もうこの世に生をなさない僕には関係のない事である。
これが、僕の全て。
僕の生きた、僕の人生の全て………。
やはり、きいたところで決して愉快な気分にはならなかっただろう?
これで、僕の話は終わる。
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