アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
6
-
娘は夫に尽くした。
それはもう、尽くされる夫が、姑が、家の者全てが娘に、
『無理をしなくて良いんだよ』
そう、思わず声を掛けてしまわずにはおれないくらいに尽くしに尽くした。
娘は夫に尽くし、そんな娘を夫は益々愛する………やがて娘のお腹は大きくなり、家はいつかの娘の村のように喜びと幸せで満ちていた。
それは、3月………桜花爛漫、よく晴れた日のことだった。
「いきんで………はい、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー………大丈夫、大丈夫よ………ヒッヒッフー………」
娘は無事に出産し母子共に健康、何の問題もない。
そう、何の問題も………ない。
「あ、あ………いや、嫌………あぁ………あああぁぁぁぁ」
16で富豪の家の次男坊に見初められ、祝言を目前に3人の異国人に純潔を奪われ、それを隠し嫁いだ先では罪滅ぼしのつもりで夫に必死に尽くしに尽くした。
赤子の泣き声が部屋に響く。
命の声………。
金色のまだ生え揃わない髪に透き通るような日本人離れした白い肌………開いた瞳は、青かった。
出産から3日後、満開に咲き乱れる美しい桜の木の下で娘は首を吊って死んだ。
17になったばかりだった。
あの聡明で心優しい美しい娘の面影はなく、全身の穴という穴から体液血液鼻水糞尿………全てを垂れ流し、おぞましく醜い姿で娘は死んだ。
故郷の父母のもとには、娘の灰と簡単な経緯を書いた紙が1枚………娘が死んで数ヶ月後に届いたきり。
こうして、僕は生まれ………母は死んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 93