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時計が19時を回った頃、合宿所の食堂は夕食の時間を迎えていた。
ガヤガヤと騒がしく、どこか漫画ででも見たのだろうか。
既視感のあるおかず争奪戦などが繰り広げられている。
その脇ではおぼんを持った部員達が食事を受け取るべく、配膳コーナーの前で長蛇の列をなしていた。
「秋月お疲れ」
食堂の入り口で声を掛けてきたのは山梨さんと瀬川さんだった。
「お疲れ様です。ロードワーク、キツそうでしたね」
「おー、裏山六往復して来たわ」
「傾斜がキツイからね。足痛い」
校舎のすぐ裏には、高さが200m程の小高い山がある。
その山をくねくねと這うように続く道は傾斜がきつく、車もあまり通らない。
中、長距離選手のメインの練習となるロードワークの基本的なコースに組み込まれている。
「緒方にシナプスの説明したの?」
「しましたけど途中で止められて終わりましたね」
「お前どうせ難しい言葉並べたんだろ」
「まぁ簡単に説明したところで、理解してもらえる気もしなかったので」
「辛辣!」
うひゃひゃと山梨さんが笑った。
「拓海!」
「げっ!母ちゃん?!」
食事は毎食保護者会が用意をしてくれる。
買出しから調理、盛り付け、片付けまでしてくれるのだ。
配膳コーナーでご飯をよそう保護者の一人に、山梨さんの母親がいた。
「げってなによ、失礼な。あらー秋月くん!今日も美形ねー」
こちらに気づいた途端、表情をぱっと変えて笑った。
「どうも」
「高校生ナンパすんなよ、恥ずかしいな」
「だまらっしゃい!秋月くん、握手!握手してもらえる?」
「はぁ…」
「握手会じゃないんですけどー」
シャツで手を拭い差し出すと、ぎゅっと握られた。
「綺麗な手ねー」
「秋月何それ!紳士の作法?!」
「紳士の作法ってなんですか」
「秋月くんご飯どれくらいよそう?」
「あ、普通でお願いします」
「かわいいわねー。拓海なんて丼よ丼!燃費悪いのかしらね」
「いちいちうるさいから!もう秋月進め進め!おかず行け!」
グイグイと背中を押されながら、茶碗によそわれたご飯を受け取る。
「またねー拓海をよろしくねー」
ひらひらと手を振るにこやかな笑顔にぺこりと頭を下げる。
次のおかず担当にいたのは、瀬川さんの母親だった。
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