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男娼とヤクザ/シーズン1(第5話)
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誰……………。
ゆっくりと歩いてくる影に、意識が朦朧とする。
繁華街の裏路地、それも人目を掻い潜るビルとビルの谷間ともなれば、塵やゴミの散らばった汚ない場所。
大和は、埃を被った身体を丸め、痛む腹や腕を押さえた。
久々に受けた、激しい暴行。
現れた男が誰なのか、しっかりと見てみたかったが、身体が痛くて背中も上手く伸ばせない。
一体、どこのどいつや………………。
こんな自分を助けようなんて、またえらく高尚な人間がいたもんだ。
「だ…………誰や、あんた………」
ただ、その登場は明らかに攻勢を変えた。
踞る大和の先で、ジリジリと後退りする不良達。
相手を見る彼らの顔には、くっきりと恐怖が浮かび上がってる。
「誰?そないなもん、お前らみたいなガキに言う義理はねぇ………………ただ、ここいらのシマを牛耳ってるモンや言う事だけは、教えたるわ」
「ひっ………………」
男の言葉に、不良達は小さな悲鳴を漏らした。
牛耳ってる、男。
考えるまでもない、ヤクザだ。
俺は、ヤクザに助けられとんか…………?
足元しか見えない景色を眺め、大和は大きく息を吐いた。
自分も、コイツらの後に殺されるかもしれない。
とことん、運がねぇ……………。
そう思っている間にも、男は大和のすぐ近くまで歩み寄り、低い声で語りだす。
「どんな人間も、商売しとれば人はそこに集まる。集まる人が増えれば、落ちる金も自ずと膨らむ。シマ言うもんは、そうやって潤うねん……………娼夫が、何や?娼夫も立派に金稼いどるで。お前らに、どうこう言える筋合いはあんのか」
「あ…………いや、これは………」
「最近、その稼ぎ頭を狩りよるナメたガキ共がおる言う話を聞いて、若いのに探らせとって正解やったわ」
「え…………………」
「俺のシマ荒らした覚悟、出来とんやろな」
「…………………っ」
覚悟。
男がそれを口にした時、バタバタと激しい足音が谷間に響き渡る。
「嵩原さんっ…………大丈夫ですか!!」
へ…………………。
「たっ………………」
一瞬、胸がハチ切れるかと思った。
嵩原!?
嘘やろ!!
目の前に、嵩原がいる…………。
起き上がって、顔が見たい。
近くで、嵩原を見たい。
何故か、気持ちは逸るのに身体は動かない。
「っ…………いっ……………」
必死に身を起こそうにも、大和の想いとは裏腹に、殴る蹴るの衝撃が至る所に痕跡を残す。
「クソ………………もう少し、暴れときゃ良かった……」
コンクリートへ両手を突き、立ち上がる事さえ出来ない不甲斐なさ。
喧嘩。
正直、あまり好きじゃない。
強くもなければ弱くもない、中途半端。
3人相手は、なかなかキツかった。
しかも、足掻く大和を尻目に、ヤクザの恐ろしさは進行していく。
「嵩原さん、コイツらですか!娼夫狩りとかほざいとったんは…………っ」
「ああ………お前ら、後は頼むわ。怪我して、仕事にもならん娼夫もおる言う………落ちる筈やった金も落ちへんようなったんや、好きなだけぶん取ったれ」
好きなだけ。
これを聞いて、不良達が失禁する程怯えたのは言うまでもない。
骨の髄までしゃぶるのか?
繁華街の裏は、決して踏み込んではならない、闇の闇がある。
嵩原は紛れもなく、その中の上層部に君臨していた。
不良達の後がどうなるかなんて、考えない方が身の為だ。
考えたら最後、余計ここには居られなくなる。
「………………俺は、こいつを連れて帰る」
「は…………わっ……ぃ………っ!」
ズキンッと背中に感じる激痛と、一気に軽くなる身体。
瞬く間に広がった視界に、大和は自分が嵩原に抱きかかえられた事を知る。
「ちょっ…………ちょぉおっ!?」
所謂、お姫様抱っこ。
痛い……………!!
身体は痛いし、こっ恥ずかしい!
「おっ、下ろせっ!!アホ………っ!!っざけんな、変態ぃっ!!」
「変態?そのまんまで動かれへんくせに、何抜かしとんな……………ええから、じっとしとれ。帰って手当てしたるさかい」
「かっ!?………か、帰ってて何やねん!!俺は、一人で帰れるわ!帰れ………ぃいっ!!」
だから、じっと。
暴れれば暴れるだけ、身体は悲鳴を上げる。
大和は身を震わせ、嵩原の肩へ顔を埋めた。
い…………痛ぇ……………。
「………………せやから言うとるやろ。動くな、大和」
大和。
久々に聞いた、『大和』。
ズリィ……………今、それ言うか。
肩から伝わる温もりと、嵩原の落ち着いた声色が、胸の鼓動をやたらと速くする。
トクントクン…………………
なんだか、全身が熱い。
熱い。
何や、これ………………。
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