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男娼とヤクザ/シーズン2(第9話)
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※R指定です。
「それ……………どう言う事や」
『あいつは、お前の親父を殺ってへん』
上地の方へ振り返る顔が、引きつる。
照明を落とした、barの店内。
自分包む腕に逸る心音が伝わりそうな程、高橋の身体を一気に緊張が走った。
「上地………………っ」
「…………………俺も、ずっとあいつを見てきた。不器用やけど、決して悪い奴やねぇ……………なんや、誤解されたまんまなんが気の毒でな」
しなやかな腰へ手を回し、見つめる視線の真剣な様。
昔からの付き合い。
それから愛し合うまで、時間を要さなかった仲。
目を見ればわかる。
上地も、長い間悩んで来たのだろう。
嵩原の想いと、自分の想いとの板挟みで……………。
これだけ一緒にいて、何も気付かなかったなんて、よく恋人なんてしてたな。
高橋は上地の胸板へ手を滑らせ、しがみつくように呟いた。
「………………聞いてもええんか?それ……………」
「お前の為にも、ええ加減言わなあかん思うたから話したんや………………嵩原の話する度、綺麗な顔が恐わなるんは解せんしの」
「あ……………はぁ……上…」
グッと力の入った腕が、高橋の身体をより上地と密着させる。
ごつごつした指が、シャツの上から乳首を弄り、長い舌が耳朶を優しく舐める仕草に、高橋は軽く背筋を仰け反らした。
「もっ…………話…………」
「ああ………話したるよ、美味い身体摘まんだらな」
「っん…………ぁ…………話が先や………て」
互いをよく知る身体の罪な事。
拒もうとしても、どこか本気じゃない。
シャツを捲り上げ、中へ忍び入る温もりに敏感さは増す。
上地のねっとりとした熱い愛撫に犯され、高橋の足は立つこともままならない。
「クス…………『話が先』なら、終わった後は楽しめんや?ほな、場所変えようか…………」
「え…………あぁっ!上地………っ」
屈強な肉体の成せる技。
上地は、ひょいっと高橋の身体を抱き上げると、迷うことなく奥の扉へと向かった。
「アホっ…………何……」
「お前が言うたんやで…………話が先やて。な?」
「や……………んっん……」
強面な男も、愛する者の前では笑顔も見せる。
呆れる高橋の唇へ無理矢理キスをし、愛を注ぐ上地の表情は誠に穏やかである。
厳しい毎日の一瞬の安らぎ。
この先にあるのは、一つの仮眠室。
店が忙しかった時、高橋が疲れた身体を休める為に用意した。
小さなシャワー室も備え、ちょっと寝るには困らない。
しかも、二人が恋人同士だった頃、遅くに訪れる上地と度々愛し合った場所。
今でも、時折上地は何か口実を付けては、こうして高橋を愛しに来る。
それはもう、ドロドロに溶ける程の執拗さ。
高橋が抵抗しても、最後は上地の愛に負けるのだ。
「愛しとる、高橋………………お前を愛せんのは、俺だけや」
「はぁ……ぁ…………ん…上………地…」
ベッドへ沈んだ身体に唇を落とし、恐ろしいヤクザの意外な顔が表に現れる。
別れても、別れられない。
艶やかな唇を赤く濡らす、目映いばかりの美しい男にベタ惚れ。
見上げる姿に、未練は溢れて辺りを埋める。
「…………………お前の親父さんが襲われた頃、俺は丁度関東へ行かされとって、何もしてやれなんだ」
「それは……………別に上地が気にする事やないて、毎回言うてるやろ」
「聞いとっても、悔やんでんねや、俺は」
ベッドへ横たわり、身を寄せ合う様子は、まるでいまだ恋人。
上地の腕枕に頭を乗せ、高橋は観念したように話へ耳を傾ける。
乱れたシャツからは肩が僅かに覗き、そこへまた上地がソッと口付けをしながら、二人は核心へと触れてった。
「嵩原の事も、側にいてやってたら力になってやれたかもしれん」
「嵩原の事………………」
「そうや………………あいつは、ただウチの親父がした事を全部被っただけやからな」
「は………………」
上地の指先が、柔らかな高橋の髪を撫で上げる。
恨み続けた嵩原の本当の顔。
強張る表情の高橋を、上地は包み込むように抱き寄せた。
「あの頃は、親父が若頭に成り立てで、どうしても自分に箔を付けたい時やった。周りの組を踏み台にして、名を上げたかったんや……………名を上げりゃ派閥に組員も増え、組長の座が近付くさかい」
鎬を削り、周りを蹴落としても這い上がる、極道の世界。
弱い者が食われ、悪知恵や卑怯さえも糧にし、のし上がった者が勝者となる下克上。
上地や嵩原の親父もまた、そうやって今があるヤクザだった。
「お前ン所の組を狙う話も、そないな流れから持ち上がったらしいわ。ただ、嵩原は真っ先に反対したて聞いた……………そこまでせんでも、勢力は鰻登り、ヤる必要はねぇってな」
「嵩原が……………?」
「それが、ホンマのあいつよ。でもな、嵩原は親父に拾われた身……………最後は、親父がやらかした組潰しを、黙っててめぇの指示やと引き受けたんや。それもこれも、報復を恐れた親父が、嵩原の名を先に出しちまったんやけど」
「………………なんや、それ」
「呆れるが、そんなんでも恩人や…………嵩原なりに恩を返したかったんやと思うわ」
上地の胸に身を沈め、高橋は厄介なヤクザ社会を知る。
自分は、もう何年も嵩原を恨んできたのに。
あいつは何の反論もなく、それを受け入れた。
「アホやろ……………」
「アホや……………せやけど、真の嵩原はそんな男よ」
上地が、高橋の誤解にも胸を痛めた理由が、ようやく理解出来た。
嵩原に責任はない。
一切関わっていなかったのだ。
「これから、お前が嵩原をどう思うか知らんが………俺の知る嵩原は、昔も今も変わらん…………筋のある一端のヤクザや」
「ん……………は………か、上…………」
一通り話の筋が付いた時、上地の舌が高橋の首筋を伝い始める。
「せやから、ガキは止めとけ……………高橋」
「も……………ぁん…んっ…」
片手はベルトを外し、早くも下着の奥をまさぐる。
たまらず浮き上がる腰が、よりそれを深みへと潜らせ、疼く下半身を刺激した。
「ふ………ぁ………あ…ぁ」
じっとりと一物の裏をなぞる、上地のいやらしい動き。
震える身体を握りしめ、上下に擦れていく動作に、高橋はたまらず身悶えた。
「ホンマの嵩原を見たら、ガキは益々惚れるわ………傷付く前に、深入りすな」
「はっ……ぁ………嫌…………俺かて、大和が………っん……上地…………ぃっ」
「頑固やの……………そこがまた可愛い思うんやから、俺もアホやな」
重なる唇から垂れる涎が、二人を結ぶ。
ギシギシとベッドの波が高橋の身体をも揺さぶり、瞬く間に着ていた服も剥ぎ取られた。
世間では非情と謳われるヤクザの、情愛にまみれた快楽の時間。
逃れられない、燃えるような一時。
それは朝まで繰り返され、高橋は上地の愛に息衝く間もなく沈んでいった。
「嵩原さん………………では、また明日同じ時刻にお迎えに参ります」
様々な愛が入り乱れ始めた、夜の街。
嵩原は、1日の任務を終え、ようやく深夜の自宅に辿り着く。
側近達が見送る中、外灯に浮かぶ姿は、また華やかに。
少し長めの黒髪を後ろへ流し、ハッキリした二重と吸い込まれるような強い瞳。
「…………………ああ、頼んだわ」
たった一言のそれも、表情を崩さず耐える側近達には胸踊る悦び。
今や、組の大黒柱。
嵩原に仕えられる事は、組員達にとって誇るべき仕事となっていた。
玄関の中へ入るまで頭を下げ続ける、忠誠。
上地が褒めるように、厳しくとも嵩原ほど慕われるヤクザは少ない。
「…………………ん?」
玄関の扉に手をかけ、嵩原は眉をひそめる。
鍵が、開いている。
一人暮らしの嵩原にとって、当たり前だが普段こんな事はない。
かつ、セキュリティも万全な屋敷。
普通なら、直ぐに後ろの組員達を動かして、様子の一つも見させるだろう。
たが、嵩原がそれをする事はなかった。
無言のまま玄関へ入ると、チラッと足元に目をやり、キッチンへと向かった。
ガチャッ……………………
ドアを開けると、旨そうな匂いが一気に溢れ出る。
部屋には煌々と明かりが灯り、ジュウジュウと何かが焼ける音が聴覚を楽しませる。
「なに、来とったんか……………」
そう口にする嵩原の目は、さっきまでの緊張感が嘘のような優しい輝き。
キッチンに立つ背中に話しかけ、微笑む姿はただただ紳士な男前。
「あ、ごめん………腹減ってたから、キッチン借りたよ。ご飯、食べるだろ?すぐ出来るから待ってて、兄貴」
兄貴。
フライパン片手に振り返える出で立ちは、どこか見覚えある顔。
長身で端整な顔立ちは、見る者を惹き付ける。
美男と、美男。
歩み寄る自分を見つめ、爽やかな笑顔に嵩原はホッと息をついた。
「湊………………来るなら来ると、連絡位せえよ。俺も帰れん時かてあるんやぞ」
「そしたら、兄貴のベッドで寝てるからいいよ。俺も、仕事が楽な時しか来れないからさ」
湊……………。
そう、湊だ。
大和が唯一気さくに話せる友人・湊が、嵩原の前に現れたのだ。
しかも、嵩原を『兄貴』。
人知れない関係が、ここにも存在していた。
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