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男娼とヤクザ/シリーズ4(第14話)
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「大和…………腹減ってねぇか?」
結局、一途な想いの邪魔なんて誰も出来なかった。
山代や錦戸に見送られ、肩を並べるヤクザと娼夫。
初々しいと言うには、少々汚れた人生を送って来たが、互いに想い合う気持ちは強さを増したよう。
疲れた大和の速度に合わせ、ゆっくり足を進める嵩原の然り気無い気遣い。
少し前なら、その足を大和が必死に追いかけていたのに、今は隣を見上げるまでになった。
「え…………腹?」
「そないな顔しとる位や…………ろくに飯も食ってへんのやろ?何か食って帰ろう」
「えっ……………」
そりゃ、恋人同士らしい事もするだろう。
旨いものでも食べさせてやろうと、嵩原なりに可愛がっているつもり。
「は?なんや、俺とじゃ嫌か」
「いっ、い………嫌なわけ…………っ」
ただ、いたいけな娼夫は、こう言う事に全く免疫がない。
嵩原の誘いに目を丸くして、大口を開ける大和の予想外の驚き。
俺とじゃ嫌か。
嵩原もつい眉をひそめる程、それは挙動不審。
「だ、だって…………は、は、初めてやから……」
「初めて…………?」
「嵩原と外で飯とか…………」
「ああ…………言われてみればそうか……」
寒さで冷えた肌も、みるみる熱くもなる。
たかが、外食。
でも、毎日食費を削り、誰かとテーブルを囲む事すらまともになかった大和にとって、大好きな男と食事なんて頭にもなかった。
嬉し過ぎて、また泣きそう。
冷たくなった手を擦り、大和は赤い顔でドキドキ高鳴る胸を押さえた。
それがまた、嵩原の心を何とも言えない気持ちにさせる。
「これからは、遠慮なんか要らん。時間が許される時なら、いつでも一緒に出来るわ」
裏社会では、ちょっとは名の知れた強面ヤクザに堕ちた、恋の花。
大和に出会って、自然に笑う事を覚える。
ポンと戸惑う頭を撫で、優しく微笑む嵩原には、強面なんて顔は消えていた。
「嵩原…………ぁ……」
「アホ、それ以上感極まるな………また泣く気か」
「うん…………堪える…」
「堪えるてな…………」
苦笑いしながらも、自分のコートを肩に掛けてやる甘い一時。
これからの日々、出来る限りの事をしてやろう。
そう胸に誓った男は、大和の食べたい物をご馳走し、楽しい時間をじっくりと味わった。
そして、当然この夜は離れられる訳がなく…………。
大和は、そのまま嵩原の家へお泊まりとなる。
「大和…………俺は、事務所に顔出さなあかんからもう出るけど、お前は好きにしたらええからな。帰っても、おってもええ………任せるわ」
「ん…………わか……た……」
ふかふかのベッドで寝る気持ちよさ。
シーツに埋もれる自分を覗き込み、囁く嵩原の声に大和は小さく頷いた。
久し振りの夜は、激しく情熱的。
何度もイカされ続けた大和の身体は、見送りも出来ない位に嬉しい疲れに染まってた。
帰りたくないな。
うっすら遠ざかる嵩原の背中を見つめながら、大和はまた深い眠りに入っていった。
ガチャ………………
「あれ、靴がある……………兄貴のじゃないよな?」
まさか、突然の訪問者が来るなんて知るよしもない。
玄関の鍵を開け、沢山の食材を買って来た人影。
「なに、女物にも見えねぇし…………珍しいな、兄貴が人を入れるなんて。一体、誰だよ………」
嵩原を『兄貴』と言える、ただ一人の存在。
溜め息混じりに顔を上げた姿は、大和もよく見慣れた顔。
「顔くらい、拝んでやろうか」
湊だった。
(いい加減、早く終わらせなきゃと思っています。読んで下さいます皆様には、感謝です(*_ _)これが一段落したら、+の今後をゆっくり考えようかなと思います)
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