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男娼とヤクザ/シリーズ4(第24話)
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恋をする悦びを知る。
恋をする苦しみを知る。
そして、愛される幸せを知る。
「嵩原…………ホンマもんの嵩原や……ぁ…」
笑顔の湊に見守られ、押し出される身体が嬉しさで高揚していく。
まさか、向こうから会いに来てくれるとは、思いもしなかった。
高鳴る鼓動と、熱い眼差し。
大和の視線は、もうそこしか見えていない。
「すまんな、大和………俺なりに気張ったつもりやけど、弟に三行半突き付けられてしもうたわ」
「ア、アホ………何しとんねん………」
「クス…………ホンマやな」
はにかむ姿に、ギュッと胸が締め付けられる。
触れても良いの?
ぼやける視界を必死に凝らし、恐る恐る差し出す手は、微かに震えた。
3ヶ月。
あっという間のようで、本当は毎日がとても長く感じていた。
嵩原のいない日々の空虚なこと。
夢みたいだ。
今、目の前に嵩原がいる。
「……………嵩原」
「ああ…………会いたかった」
大和の伸ばした腕を掴み、グイッと引き寄せられる身体は、勢いに任せて嵩原の胸へと沈んでいった。
抱きしめられる事の久し振りに味わう、温もり。
ほのかに香る嵩原の香水が、一気に大和を以前の記憶に戻す。
会いたかった。
会いたかった…………。
「俺も…………俺も、会いたかった……っ」
必死に背中へ腕を回し、一ミリも離れないようにしがみつく。
互いに、磨り減る事のなかった気持ち。
「愛しとる、大和…………やっぱり、俺にはお前しかおらん。ええ歳したヤクザが、何アホ抜かしとんかと思わても仕方ねぇ…………お前がええんや」
「嵩……………」
「頼むから、側におってくれ」
自分を見つめる瞳に、身体中が火照りを帯びる。
「頼むから……………」
「あかんか…………?」
嵩原の言葉を繰り返し、大和は赤い顔をますます色濃く染めた。
「あ、あかんわけ…………」
最初は、何かと突っかかってしまった自分の行い。
それが、好きに変わるのに時間はかからなかった。
日に日に惹かれる嵩原の存在。
初めてのまともな恋だった。
ヤクザの幹部と娼夫。
難儀な事ばかりで、ろくな肩書きでもない。
だけど、想いだけは本物。
「なら、決まりや………もう二度と俺から離れるな」
グッと腕に力を入れ、嵩原は大和をより強く抱きしめた。
「嵩原………ぁ…」
「一緒に暮らそう…………俺が、お前を一生幸せにしたるから」
まるでプロポーズ。
肌に当たる風が、優しい暖かさを運ぶように、二人の間にもようやく春が訪れようとしていた。
厚い胸板へ顔を埋める幸せ。
出会った頃は寒かった季節が、今はこんなにも景色を変える。
「うん………うん、一生側におる………俺も、嵩原を幸せにする………っ」
今度は、一緒に。
柔らかな日差しに包まれ、見つめ合う二人の表情には、笑顔が花開く。
一足早い、春が来た。
(皆様、いつもありがとうございます。こちらもあと少しになりました。長い回数お付き合い下さり、本当に感謝致します。本編の二人は難しいですが、こちらは堂々と恋が出来ました!残り数話頑張ります)
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