アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
男娼とヤクザ/シリーズ4(第26話)
-
誰にだって、幸せになる権利はある。
幸せになりたい。
夜の街に立っていた時、どこか心の片隅でそんな事考えてた。
「シュウや…………」
「…………シュウ?」
「俺の…………娼夫仲間………」
「え……………」
街角の一角を一心に見つめ、大和は少し嬉しそうに呟く。
久し振りに見る、シュウ。
相変わらずの美しさと、人目を惹き付ける色気。
あれから、会えないままになっていたシュウの変わらない姿に、大和はホッと息をする。
考えてみれば、あまり詮索もしない娼夫同士、シュウの家も連絡先もろくに知らない大和が、嵩原との事を報告する術はなかった。
ずっと気になってた、シュウの事。
「嵩原の事で悩んどった時、あそこにおるシュウに励まして貰うてたんや。良かった………元気そうで」
良かった。
顔を見たら、元気そうな様子が一番安心した。
「大和……………」
目を細め微笑む大和の表情に、嵩原はその娼夫を見返した。
あれが、シュウ…………。
威勢の良い大和とは、正反対の綺麗な青年。
まるで、ハーフ。
高い鼻筋にキラキラした瞳。
多分、夜の街に立てば、客に困らない人気の娼夫。
見るからにそう感じたが、今の嵩原にはそれがどんなに美しくとも興味はなかった。
人の外見など、どうでも良い。
ただ、大和が世話になったと聞いてしまえば、不思議と優しい気持ちで見てる自分がいる。
恋は、不思議だ。
一瞬で、人を変えてしまう。
「シュウさん、待って下さいっ!」
「いい加減にしろ、一成………話ならもう…」
「終わっていませんっ!」
一方で、大和達が見ているとは知らないシュウは、数ヶ月振りに会う一成に表情を曇らせる。
一成。
ずっとシュウを想っていた男子。
アルバイトの身でありながら、自分へ貢ぐ一成がシュウには苦しかった。
だから、キツく突き放したのに…………。
「俺…………あれから、必死に仕事探しました。シュウさんの言う通り…………金もない俺が、シュウさんの側におったらあかんて思うたからです」
「せやから、それは………」
「仕事、見つかったんです!ここから近い不動産屋で働いてます…………気のええ社長と奥さんが事務しとる、小さな会社ですけど、安月給なりに給料はあります。給料………シュウさんに全部あげてええ……」
「アホか………!何言うとんや」
白いシャツに、安っぽいネクタイ。
これまで見た事のない一成の姿は、とても初々しくも眩しく思えた。
日の当たる所で、働く。
やはり、一成と自分では住む世界が違う。
「やっと貰えた給料、大事に使え」
シュウは、唇を噛みしめ一成から目を逸らした。
自分が、これをくすませてはいけない。
一成の為にも、自分は…………。
「大事に使うてます!大事な人の為に使うんです、何があかんのですかっ」
「一成…………っ」
「俺が、支えます…………今は安月給でも、少しずつ契約も取れて給料上がってるんです。がむしゃらに幸せにしますんで、一緒におって下さい…………シュウさんを、支えさせて下さい。お願いします!!」
オシャレな雑貨屋のウィンドウ前。
通行人達が振り返る最中、一成は一生懸命頭を下げてシュウへ愛を叫ぶ。
がむしゃらに幸せにする。
この時の一成を見ていたら、まさにがむしゃらにと言う言葉がピッタリだった。
「……………青臭い告白やな。でも、悪うねぇ………」
「嵩原……………」
眩い瞳が揺れている。
ボソッと囁いた嵩原を見上げ、大和は価値観の近さに悦びを覚える。
シュウだって、わかってる筈。
本当は、自分がどうしたいか。
わかってて踏み出せない。
大和と同じ。
娼夫が幸せになんて望んではいけないと、気持ちに蓋をするからだ。
「行けや、シュウっ!!」
街中にこだまする、切なる想い。
「俺かて幸せになれた!今度は、お前の番やっ!俺らにだって、幸せになる権利はあるやろォっ!!」
「え…………やま……」
驚くシュウが、こちらを見る。
気が付いたら、大和は大きな声を張り上げ、シュウへ向かって想いをぶつけてた。
「嵩原と話したんや…………シュウのお陰で、話したんや!シュウっ…………素直になってええねん!!」
素直になってええ。
顔を真っ赤にして、唇を震わせる大和が、シュウの視界を塞ぐ。
ああ、あの人が嵩原さん…………。
叫ぶ大和を見つめ優しく微笑む男性に、シュウは目頭を熱くする。
「幸せになったんや…………大和………」
嬉しい。
仲間の幸せが、こんなにも嬉しいなんて………。
「……………素直にって」
なれるだろうか?
自分が。
「……………シュウさん」
「一成……………」
高鳴る鼓動が、我が身へ問いかける。
幸せになっていいの?
不安げな表情を浮かべ、自分を見つめる一成がたまらなく愛しい。
本当は、出会った時からときめいた。
自分にはない、はつらつとした爽やかな青年。
好き。
たった一言が、これほどまでに重いと、一成に会って思い知る。
幸せになっていいの?
「俺…………お前が…………」
幸せになりたい。
(予定では、あと2話位で終われるかなぁと思っています(多分延びないで済むかなと汗)。いつもありがとうございました(*_ _) また、最近なかなか更新出来ずすみませんでした。体調不良や不具合等で更新出来ない時が続きましたが、更新出来ない時はコメント欄に一応理由載せてます…コメント欄が見られない方には申し訳ないです(._.))
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
231 / 241