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伊勢谷と錦戸
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竜童会には、嵩原に救われた男が多い。
弱っている人間を放っておけない、嵩原の性。
伊勢谷と錦戸。
この二人も、そう。
10年前、後輩を助ける為に兄を殺された、錦戸。
8年前、親が借金だけを残し逃亡、身売りされそうになった、伊勢谷。
錦戸は今、敬愛する嵩原の右腕となり、伊勢谷は、嵩原の一番の密偵として動く。
そんな二人は、歳は錦戸が上だが、最近嵩原に密偵の存在を紹介され、伊勢谷を知ってからは、度々食事などをするようになっていた。
「錦戸さんっ………………すみません、お待たせしてしもうて…………………」
オシャレな店が建ち並ぶ、夜の街中。
ヤクザには似つかわしくない雰囲気の場所で、一人の男が錦戸へ駆け寄った。
「…………………伊勢谷」
ジャケットにTシャツ姿の、今宵ラフな錦戸の目に留まる、ハーフの様な綺麗な顔立ち。
竜童会でも、あまりその存在は知られていない、嵩原の密偵、伊勢谷である。
「いや、俺も来たとこや」
とか言って、30分は待っていた。
基本的に、錦戸はクールな感じ。
嵩原の前では、嵩原が何でも受け止めてくれるので、つい言いたい放題になるが、中々な人見知り。
錦戸いわく、あの人は『特別』。
「ありがとうございます。まだ、関東に来たばかりで慣れなくて………………いつも錦戸さんに誘うてもろうて、有り難いです」
綺麗な顔を緩め、伊勢谷は笑みを浮かべた。
美人過ぎる。
何と言うか、誰がどう見ても、伊勢谷はヤクザに見えない。
「親父は、男が惚れ込む男前やけど………………伊勢谷は、ホンマ…………俺らン中おったらスケ(女)みたいやな…………」
今まで、幾度となく嵩原に見とれて来た錦戸も(態度は悪いが、嵩原大好きなので)、伊勢谷の美しさには脱帽。
意識してなくとも、つい目が奪われる。
油断したら、変な輩に持っていかれそう………………。
「言うても、あの高橋が育て上げた位やから、変な輩もヤられるか……………………」
錦戸が、最大にライバル視する、高橋。
昔も今も、嵩原が最も必要としてきた高橋が、錦戸は正直好きではない。
何故なら、ずっと言われてきた。
『高橋には、一生勝てん』
何かにつけて比較され、高橋より評価された事がないからだ。
「何か言わはりました?錦戸さん……………」
「…………………いや、何でもない」
その高橋が、嵩原の命により、伊勢谷を作った。
関西では一緒に暮らし、この世界のいろはを叩き込んだのだ。
美しい顔とは裏腹に、伊勢谷もかなりの実力者。
自分を不思議そうに見てくる伊勢谷に、錦戸は目を細める。
それでも、年下の伊勢谷を可愛いと思う。
亡き兄も、こんな風に自分を想ってくれていたかと思えば、自然と優しくなれる。
「伊勢谷……………お前、高橋に会いとうないんか?」
「……………………え」
ドキッとしたような、伊勢谷の顔。
会いたくない訳ないか…………………。
自分を育ててくれた相手。
それも、高橋みたいな完璧男と、共に暮らしていたのだ。
嵩原への敬愛とは、また違う感情だって芽生える筈。
微かに頬を赤らめ、目を伏せる伊勢谷に、錦戸は……………………………。
「なんや、コレ……………………」
自分で振っといてなんだが………………ちょっと、イライラしてるかも。
また、高橋か!
「に………………錦戸さん?」
伊勢谷は、黙り込みだした錦戸へ目を向け、顔を近付けた。
「え………………わっ!?顔近いっ……………伊勢谷!」
ただでさえ、伊勢谷といると目立つのに、妙なシチュエーションが、余計に目立つ。
我に返った錦戸は、間近に迫る伊勢谷にたじろいた。
「す、すみませんっ……………何か、高橋さんの下りから、急に錦戸さんが黙り込まれはったから…………」
目の前で戸惑う伊勢谷が、また可愛い。
「ぷ…………………すまん、お前が可愛いから、何でもええわ…………………」
「は、はい…………………?」
嵩原から引き継がれる、竜童会の流れ。
兄貴は、弟に優しい。
「……………………今日、何食べる?お前の食べたいもん、食わしたる」
後日談。
竜童会関東、定例会。
「高橋……………っ」
「あ?………………どないしたんや、錦戸」
錦戸は、珍しく高橋を呼び止め、一言。
「俺………………やっぱ、お前嫌いや」
「………………………は?」
罪のない高橋、とばっちり。
(『恋愛男子+』読んでいただき、ありがとうございます。すみません、前ページ誤字ありました。見られた方、申し訳ありません。直してます(汗))
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