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ちょっとだけ、昔の話(大和、高橋編)
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15で、刺青。
大和が、父嵩原にも言わず勝手した行為は、瞬く間に竜童会中を駆け巡る。
それについて、嵩原が言った言葉は一つ。
『俺のガキやからって、遠慮すな』
命よりも大切な息子を、嵩原は心を鬼にして突き放した。
そして、嵩原のその気持ちを、高橋は誰よりも深く受け止めた。
「何ですか?そのお顔は…………………」
竜童会組長嵩原邸。
関西でも指折りの大豪邸に、大和は住んでいた。
嵩原と大和。
二人だけの家族だが、家へは竜童会の組員が毎日多く出入りする。
高橋もまた、そんな一人。
以前は嵩原の右腕として、今は大和の側近として。
「また、若いのとやり合うたんですか?」
嵩原邸のキッチン。
大和の夕食の準備をしながら、高橋は溜め息をつく。
「いや……………だってな……………」
「言い訳はいりません」
「……………………はい」
『また』。
竜童会へ入りたての大和は、若手と喧嘩が絶えなかった。
組長の息子だからと、鳴り物入りで足を踏み入れた大和が、血の気の多い連中は気に入らない。
若頭になっても、敵が少なくはなかった大和だが、それは入ったばかりの時から、始まっていたのだ。
高橋が目を離すと、直ぐに若手が大和にちょっかいを出し、喧嘩が勃発。
悪ガキ大和も、二十代のヤクザ相手に、本気で喧嘩した。
「こっち来て下さい。手当て致します」
唇を切り、血が滲む口元と、目の近くにアザ。
綺麗なお顔が、台無しやないか…………………。
高橋は手慣れたように、キッチンの棚から救急箱を取り出す。
「っい………………高橋、もうちぃと優しく……………」
「あきません。私の言い付け、守らへんかった罰です………………我慢して下さい」
「う………………はぃ…………」
高橋に全てを委ね、大和はシュンとする。
もう、ただの不良ではない。
無駄な喧嘩は、禁止。
大和が、高橋とした約束。
でも、事はそんなに上手くは運ばない。
結局、馬鹿にされてしまうと、大和も頭に血が上る。
それを、若い組員達も狙っているのだ。
「ええですか、大和さん。組の連中もあしらえんようやったら、他所の組なんか相手に出来ひんですよ?これから……………大和さんは、大きな道を歩まれて行くんです。視界は、外へ向けて開いて下さい。中に、大和さんをのし上げるものは、ありません」
結果が、全て。
内輪揉めばかりしていても、大和の目指す『てっぺん』の糧にはならない。
嵩原の想いを汲んだ高橋の目は、既に随分先を見ていた。
「…………………すまん………………」
高橋の的確な言葉。
若すぎる大和にとって、側に高橋がいる事は、何よりも財産となる。
これから、僅か2年で大和は結果を出す。
高橋の無償の愛が、そうさせたのだ。
「はい…………………では、今日から頑張りましょう」
「高橋…………………」
そんな大和を見つめ、高橋は笑みを浮かべる。
「手当てが済みましたら、ご夕食に致しますか?」
「今晩のメシ何………………?」
「ハッシュドビーフです」
「うわっ………………大好きなヤツやん♪」
無償の愛。
それは、今も変わらない。
全ては、若の為。
自分を救ってくれた、嵩原の為。
ただ、その為だけに、高橋は生きる。
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