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ちょっとだけ、昔の話(嵩原、高橋編②)(前編)
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これからの本編の流れでも、欠かせない過去。
この二人の関係は、私の中で譲れません。
これは、駆け出しの嵩原が、高利貸黒河から高橋を救い出した後の話。
「ここは……………………」
古ぼけたアパートの一室。
和室と板張りの台所だけの間取りを見渡し、当時まだ二十歳前後だった高橋は、立ち竦む。
黒河と対峙した直後、行く当てのない高橋を、嵩原はここへ連れて来た。
「隣、俺んち」
「えっ……………………」
小さい折りたたみのテーブルを、和室で広げながら答える嵩原に、高橋は目を丸くする。
「すまん、ここしか思いつかへんかった……………俺、金無いし……………大家さん、めっちゃええ人やから、頼みやすいさかい」
この頃の嵩原は、本当に金がない。
まだ駆け出しの嵩原が少しずつ稼げる金は、その殆どが妻多香子の治療費に当てがわれる。
「ウチの嫁、また入院するから、飯の用意とかしてやれへんけど………………ご飯位は作れるやろ?家電は、木瀬さんが寄付してくれる言うたから心配いらんよって、今日だけ我慢してや」
だから、これは嵩原の精一杯の心遣い。
周りへ頭を下げて、嵩原なりに高橋を迎え入れようと頑張った。
「あ、布団…………後で持って来るから、待っとって」
そう言って、嵩原が戸口に歩きかけた時、色の剥げかけたドアのノブがガチャガチャと音を立てる。
「ん………………………?」
ガチャガチャ…………………バンッ!!
「お父ちゃんっ!!!」
一晩外泊していた父親の帰り。
待ちに待っていたチビ大和が、我慢出来ずドアを開いた。
「え………………………」
お父ちゃん……………………?
キョトンとする高橋の前で、一気に顔が綻ぶ嵩原。
「大和ぉぉぉ………………っ!!」
「お帰りぃっ、お父ちゃんっ!」
熱い熱い、親子の抱擁。
「ただいまぁ~♪会いたかったぁぁーっ!!」
「もう、何でいきなり泊まんねんっ!お母ちゃんと二人で寂しかったんやでぇっ」
「ごめんなぁ、急に仕事が早まってしもうて」
白洲会のシマへ行き、高橋に偶然会ってから、とんとんで黒河潰しまでやってのけた、嵩原の一日。
激しい格闘したなんて、この我が子を抱く嵩原からは微塵も感じない。
突然の出来事に、高橋は唖然とし、ただただ二人の仲の良さに圧倒された。
「た、嵩原……………………」
「ああ、こいつ………………俺のガキでな………」
「ぅわぁぁぁぁ!!綺麗なお兄ちゃんやァっ!」
子供は、無垢である。
大人の紹介よりも、興味が先へ行く。
つぶらな瞳をキラキラさせ、お父ちゃんの肩越しに高橋を見上げる。
「は………………初めまして、高橋と言います」
可愛い。
初めて接する、小さな子供。
高橋は、やや緊張しながらも身を屈め、頑張って笑顔を作った。
「初めましてぇっ………………俺、大和ぉ!!」
満面の笑みで返してくれる大和に、キュンとする。
子供って、こんな感じなんや………………。
数年に渡り、黒河から隔離された生活をしていた高橋には、何もかもが新鮮で、ドキドキの連続。
高橋と大和。
これが、初対面となる。
(皆様、いつもありがとうございます。今回は、今後の本編の展開でも関わってくる、嵩原と高橋の過去をまた少し振り返りました。短くてすみません(汗)高橋の新しい生活の始まりを、また少し後編で描きます)
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