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奪った?
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十四松視点
僕は一松兄さんが好きだ。
幼い頃から隣にいてくれた、そばにいてくれたあの優しい眼差しが、どうしても好きだ。
好きなところはもっとあるが、きりがなくなってしまうので、これだけにしておく。それに、本題はそこじゃない。
カラ松兄さんが、一松兄さんを奪ったのだ。
正式に言えば、二人は付き合っているわけではない。しかし、あの二人は両想いなのだ。それに、最近、一松兄さんはカラ松兄さんとずっと一緒にいるし、僕に構ってくれることは目に見えてわかるほどに減っていった。これはあからさまに何かあるだろう。
そんなわけで、今日こそ聞き出そうと機会をうかがう。
「僕、合コン行ってくるね〜」
「合コンいってる暇あったら俺とハロワ来い!」
「え〜、ヤダよそんなの! 女の子との約束は絶対! クソダサ松兄さんにはわからないよ」
「て、てめ……っ」
「じゃ〜あね〜♪」
「おいこら待て!」
トド松とチョロ松兄さんが口喧嘩をして出て行った。
おそ松兄さんは競馬でいないし、一松兄さんさえいなければ……。
「……俺、猫んとこ行ってくる」
「おう、行ってら–––––––」
「行ってらっしゃああああああい‼︎‼︎」
カラ松兄さんの言葉にワザとかぶせて言った。大方、カラ松兄さんは僕のことをカラッポの頭だと思っているから、いつものことだと思っていることが救いかな。勝手にそう思い込んで……僕だって、欲しいものは絶対に逃さないんだから。カラ松兄さんのほうがよっぽど頭カラッポ松だよ。もちろん、その言葉を口に出せたら、カラ松兄さんの精神崩壊を狙えるのだろうけど。
「カラ松兄さん!」
「なんだ? ジュ〜シマ〜ツ?」
僕はいつも通りにそう言った。カラ松兄さんも、いつも通りのイタさで言った。今までなら、なんとも思わないカラ松兄さんのこの発言も、今は非常に不愉快でカンに触る。
「カラ松兄さんは、一松兄さんのどー思う?」
「一松か? あぁ、アイツはいい奴だよ。けど、照れ屋さんだからなぁ……い–––––られ–––––––」
初めらへんの言葉から、もうどうでもよくなってきて、途中から話を聞いてなかった。
はぁ……ホント、ムカつく。カンに触る。消えればいいのに。死ねばいいのに。
前みたいに、カラ松兄さんのカラッポな頭に、石臼落ちてこないのかなぁ。そしたら、少しは僕の気も楽になるんだけど。いや、ココは僕自身の手でやってやりたいなぁ……バットとか? いや、たりないなぁ……あ、高校生の頃に使ってたあの釘バットで殴るとか? んーでも、なんかもの足りないような……
「十四松? 聞いてるか?」
「–––––あ、ごめんごめん! で、結局のとこ、一松兄さんのこと、どー思ってるの?」
「そ、それは……えぇっと……」
「はっきり言えよ」
僕はそのもったいぶった態度に苛立ちとを感じ、いつもより低めの声でそう言った。
カラ松兄さんは「え……」と一瞬動揺し、そのまま硬直した。
「しらばくれんなよ。白々しいにもほどほどにしろ。いい加減、はらわたがにえくり返りそうなんだけど」
「じ、十四松? 一体なんのことだ?」
「だーかーらー! それが腹立つって言ってんじゃん‼︎ ホント頭カラッポ松だなあ‼︎」
「じ、十四松! さすがにそれはないぞ!」
「その兄貴ズラも、なにもかも、ムカつくんだよ! なぁ‼︎」
僕はそう凄み、ついに、ドストレートにこう聞いた。
「………たんだろ」
「は?」
「奪ったんだろ! 一松兄さんのこと!」
僕は、その白々しさと今までの苛立ちをぶつけながら、カラ松兄さんの胸ぐらを掴みながらいった。
「じ、十四松?」
カラ松兄さんが僕の目見て、確かにこう言った。
「奪ったって、なんのことだ……?」
僕はその言葉で完全に堪忍袋の尾が切れ、そのまま殴りかかろうとしたとき、タイミング悪く、玄関の方からドアの開く音がした。
この状況を見られるのは、さすがにまずいだろう。
僕は、カラ松兄さんから手を離し、いつも通りに「おかえりー!」と言った後、カラ松兄さんのことを強く睨みつけた。
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