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だけど一向に慰めてはくれなくて....それがさらに少年を追い詰めていった
コンロではシュンシュンとやかんのお湯が沸騰する音が聞こえてその細い注ぎ口から白い湯気が上がっていた
彼は少年がうずくまって泣いているのを避けるようにしながら移動して沸騰したやかんに手をのばした
その時、少年はそんなこともわからずに彼の片足に体ごと縋りついた
ワザとではなかった
ただ振り向いて欲しかっただけ...
「わッ...」
足をとられバランスを崩し、彼は持っていたやかんを床に落とした
ガシャンーー!!という金物が床に転がる音と立ち上る湯気
跳ねて飛び散る熱湯が彼の足にかかる
「熱...」
思わず顔をゆがめると彼の足元で小さく唸り声が聞こえた
「ぅぅ...」
少年は彼の足を掴みながらそこに倒れこんでいた
「ユウ!」
慌てて抱き起し体を確認する
やかんから流れた熱湯は運よく彼の全身を濡らすことはなかった
しかし唯一投げ出された左の太ももだけはそれをダイレクトに浴びたらしく、一瞬の出来事だったはずなのにみるみる赤くそこが腫れ上がっていく
急いで少年をキッチンに座らせてその太ももを冷やそうと足をシンクの中にいれた
直接水道から水を大量に流してできる限り冷やしていく
「大丈夫?ユウ...痛い?」
シンクで大量の水を流しながら彼は少年の顔を心配そうにのぞき込んだ
瞳を見つめて少年の髪を耳に掻き上げる
その瞬間、少年は彼にしがみ付いて声を上げて泣き出した
「痛かったね?大丈夫だよ、よしよし」
そういって強く抱きしめてもらって頭を何度も撫でてもらった
....だけど少年が泣き出したのは火傷のせいじゃなかった
彼が自分を見てくれたこと
目を合わせて自分の名前を呼んでくれたこと
それが嬉しくて涙が込み上げたのだった
痛みは感じなかった
ただ自分がいないものとして否定されて扱われたことがたまらなく怖かった
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