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「もしもし...ちょっと頼みがあるんだけど...」
突然の電話
懐かしい声で彼は言った
「久しぶり」も「元気だった」もなく、開口一番の悩み相談
だけど、それは相談というよりまるで命令だった
「相談あるから...夜来てよ」
それだけ言って電話を切られた
人の都合なんてお構いなし、有無を言わさぬその姿勢は相変わらずだな...なんて耳元で繰り返される電子音を聞きながら思った
「椎名先生...次、お願いします」
受話器を置いてすぐさま次の診療の診察の準備に取り掛かった
置かれたカルテに目を通してその患者を笑顔で迎え入れた
「先生....私...どうしたらいいんでしょうか?」
そういいながら目の前に現れた患者は泣きながら彼に訴える
彼は笑顔でそれを受け入れて患者の思いに耳を傾け、手を組みながら向かい合った
「大丈夫ですよ、何も心配はいりません」
張り付いたような笑顔で、患者の脈略もない話を時間の許す限り聞いてあげる
よくもまぁ...こんなにくだらない話を延々できるな...と思いながらそんなことはおくびにも出さずに相槌を繰り返した
頭の半分で聞きながら...ふとさっきの電話を思い出す
相談なんて....珍しいな....
「先生...聞いてます?」
患者はハンカチを握りしめたまま怪訝そうに彼を見つめていた
いけない...集中しないと...
一つ咳払いをして向きなおして目を細めてた
「もちろんですよ...それではお薬を出しましょう...よく眠れますよ?」
話をただ聞いてあげて、とりあえずく安定剤でも出しておけば満足することだろう
彼は心の中でつぶやきながらその旨をカルテに記入していく
「ありがとうごさいます」
「あなたはがんばってますね...大丈夫ですよ」
肯定してあげればなお良し..として患者は部屋を出ていった
くだらないな....
ビタミン剤のような薬で良くなったような気になれる....
口が裂けても表では言えないことをその後ろ姿を見ながら思う
腕時計を見ながら約束の時間までの段取りを頭の中に思い浮かべた
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