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「これ...結構ひどいよ?」
素肌に浮かぶ無数の痣
煙草を押し付けたような丸い火傷
特に二の腕と太ももに巻かれた包帯のケガが一番ひどそうだった
太ももの包帯は中で化膿して、それが皮膚に張りついて、患部を確認することができないくらいだった
「これじゃ見れないから..病院連れて行こう?」
「だめ...先生やって?」
「無理に剥がせないよ...これじゃ痛くて」
「だめ...先生やって?」
何を言ってもこれしか返ってこない
他の意見などいれない..彼の特徴だった
「だけど...」
うろたえる椎名に向かって彼は言う
「大丈夫だよ..ユウは」
「?」
「痛くないって...ねー?ユウ」
そういって、息も絶え絶えの少年に声をかける
少年は先ほどまでこちらに反応を見せなかったが彼が話しかけるとかすかに反応して彼の顔を見上げた
「痛い?痛くないよね?」
念を押すように彼が言うとコクリと小さく頷くのが見えた
「そんなわけないだろう...」
「いいから...早く剥がして」
言いかけた椎名の言葉をさえぎるよ冷たく言い放つ
こんな小さな少年にそんなことはしたくなかった
だけど見据える彼の目に、このまま「できない」と手を離すことなどでできそうになかった
「じゃぁ...そっち押されて..」
明らかに痛みを伴うはず...椎名は彼に少年の上半身を押さえるように指示しその太ももに触れる
さっきまでほとんど動かなかった少年はその瞬間、ビクリと硬直する
「ごめんね?ちょっと痛いよ?」
そういってその包帯を剥がしにかかる
「.....!!」
べリベリと音を立てて、化膿した皮膚と一緒に少年から離れまいと張り付いた包帯を剥がしていく
「がっ...ぁぁあああ!」
押さえつけられた少年は仰け反るように暴れ大人の力でも押さえつけるのが大変なぐらいだった
「ごめんね!もう少しだから!」
少年のためのも早く終わらせるために急いで剥がしていく
椎名は焦りながら罪悪感でいっぱいだった
背中に汗をかきながらやっとの思いで剥がし終わると、少年は口から泡を吐いていた
患部が化膿してした傷口をみて自分には手に負えないと感じる
「悪いけど...僕は精神科医だよ?専門外だから」
「だめ..先生やって?」
その言葉に揺らぐことはなく彼は椎名に手当をさせる以外の選択肢を与えなかった
いくら一通り学んでいるとはいえ専門の用具もないまま素人に毛が生えたような手当しかここではできないあろう
それでも自分の知識のすべてを総動員して、できる限りの手当を施した
「明日、必要なも持ってくるから」
そういいながら包帯を巻き押して留める
少年は終わるまで必死に痛みに耐えながら彼の胸に顔をうずめてグスグスと泣いていた
「ほら..終わったよ?ユウ?」
なだめるように彼は少年の頭をしきりに撫でながらベットに寝かせていく
椎名は気持ちを一息落ち着かせて、彼を見据えた
「どういうこと?」
この状態、少年のこと、聞きたいことが山ほどだった
連絡を取らなくなってから今に至るまでのすべてを聞かないと到底納得できることではないのだ
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