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ここに来るのが怖かった...
だれかに助言を頼むこともできたのに...
警察に行くこともできたのに...それでも彼に言われた通りに必要な道具を持ってここまで来てしまった
「来てくれないんじゃないかと思った...」
彼がそういいながら僕の抱えた荷物をもってくれた
「あのこは...?」
「今日は具合がいいみたい...」
そういいながらそのまま少年がいる寝室まで案内された
ベットに寝かされた少年は僕を見るなり顔をこわばらせた
おそらく昨日の包帯を変えたのがひどく痛かったのだろう...僕のことを「痛みを与える人」と認識しているようだった
彼は少年を抱き起して僕を紹介した
「ユウ...昨日の先生だよ?大丈夫だよ...怖くないよ?」
少年は彼の胸の中に顔を隠すようにして、横目で僕を見た
「大丈夫だよ...ユウの痛いとこ、治してもらおうね?」
そういって僕に少年のそばに来るように促した
「ちょっと顔見せて?」
ベットに座り、少年の顔に触れる
真っ白く透き通る肌の頬が赤く染まっていた
戸惑い、おびえように僕の顔を上目づかいで見ながら彼を仰ぐ
「ごめんね?見せて」
怖がらないように少年がこっちを向いてくれるように優しく声をかけた
彼は少年の包帯が巻かれた二の腕を強く掴んだ
「ぎ...ッぁ」
苦痛に歪む少年に向かって彼は冷たく言った
「ユウ?先生が見せてっていってんの」
ギリギリと力を入れて痛みを与えるのを目の前にして、僕は思わず、彼に飛びついた
「なにやってるんだよ!離して!」
腕を掴んだ手をもぎ取るようにして少年から離すと、巻いてあった包帯にうっすら血が滲んだ
「これじゃ傷口がひらくだろ!」
声を荒げながら僕は少年を自分の方に引き寄せてしまった
少年は目をぱちくりさせながらひどく驚いてそのままベットから転がるように落ちてしまった
足のけがのせいで受け身も取れず、少年はベタリと床に倒れこんだ
「ごめん!大丈夫?!」
慌てて抱きおこそうと手を伸ばすと、少年はその手を払いのけて、彼に腕を伸ばした
「うぅ...」
今にも泣き出しそうにして彼に抱いてもらおうと必死に片手を伸ばしていた
「ユウ....ちゃんと見てもらうんでしょ?」
そういいながら彼は少年を見降ろして、伸ばされた手に触れることはなかった
空を掴むように伸ばされた腕は行き場所をなくして、少年の膝に戻ってしまう
「ユウ...せっかく来てくれたんだよ?ちゃんとして」
床でうずくまる少年に向かって彼は冷たく言い放って、足で少年の太ももを踏みつける
「いっ...ぁぁ」
「ちょっと!やめろって!」
目の前で繰り広げられるその行為に僕は体ごと抱きついて少年をかばっていた
少年のそばに座りこんで目線を合わせると、その目からポロポロと涙が零れ落ちた
「大丈夫だよ?泣かないで?」
僕は泣き出した少年の頭を撫でて慰めながら彼を睨みつけた
「なんでこんなことするの?!泣いてるじゃないか?!」
僕の腕の中で涙を流す少年をかばう僕に向かって彼は言った
「先生が遅れてくるからいけないんだよ」
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