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「先生がいなくなったらユウのこと殺しちゃうかも」
それはとても冗談に思えない
そこに流れる冷たい空気
笑う口元、細める瞳、緩んでいく頬
とてもじゃないが、普通とは思えない
恐ろしいよりももっと強い感情の言葉があればいいのに...
椎名は奥底から湧き上がる震えを悟られないように目線を伏せて、彼の会話を聞流しながら、自分の用意した鞄をまさぐる
「手当だよね...薬も...」
「先生ってさ...責任感あるから俺のことさっさと誰かに明け渡すってことしないと思ったんだよね」
彼は独り言のように続けていく
「ユウも先生がいた方がいいかなって...だからさ、ここにいてよ??」
ここに居てはダメだと本能が訴えていた
自分はなんて滑稽なんだろう
彼は自分の患者で...それ以上の存在だったから
彼を理解した気でいた
本当は何もわかってはいなかった...
それどころか全て読まれて彼の想像通りの行動をしているなんて...
現に自分の経験からどんなに彼を読もうとしてもなんの感情も見てとれない
それどころがこの状況を楽しんでいるみたいだ
はやくここから出て、しかるべき対応してをしなくてはならない
”彼は危険すぎる”
急ぐように少年に薬を飲ませようと近づいた
「口開けて?」
しかし、椎名が薬を飲まそうとしても少年は恐がるように彼の後ろに隠れてしまう
少し焦れたように少年の包帯の上を掴んでしまい、少年は苦痛の声をあげた
「ごっ...ごめんね!?」
「ユウ...ちゃんと先生に見せて?」
少年は彼に言われるとすぐに、椎名に顔を向けてゆっくり小さな口を開けた
口に放り込んだ薬が苦くて、顔を歪めて少年は吐き出してしまった
それを見て彼はクスクス笑いながら自分にその薬と水を含んで少年に口移しで与えていた
少年は彼の前で泣いたり笑ったりとコロコロと表情を変えていく
それも普通ではないことは一目でわかる
「火傷は感染しやすいから...まだ安静にしてなきゃだよ」
それだけ行ってまずはここから出ないと...
なんとかその場を取り繕うって帰ろうと立ち上がりかけた時、体に衝撃が走った
「!!」
椎名の意識は一瞬にして真っ白に変わりそのまま床へと倒れこんでしまった
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