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彼が家の扉を開けたとき、部屋の中は真っ暗だった
壁を伝って明かりのスイッチを入れると部屋がパッと明るくなった
「う....」
急に明るくなって眩しい声を上げる椎名がいた
そしてその腕の中で目をこすりながら起き上がる少年の姿も見えた
少年は彼の姿を見て、するりと椎名の腕のから抜けて、駆け寄ってきた
「あー...」
彼の周りを飛び跳ねて抱き上げてもらうのを待っている
「いい子にしてた?俺がいない間にずいぶん先生と仲良くなったんだね」
ニコッと笑うと少年は彼の笑顔に反応してニコニコした顔を向ける
「分かってないね」
ほっぺたをギュッとひねりあげられて、少年ははしゃいでいた身体をおさえつけた
抓られた頬がジンジンする
「プリン買ってきたよ?食べる?」
喜んでいいのか分らない
なにが悪いのかわからない
少年はおどおどしながら彼の腕をとる
頭を撫でて貰わないと不安が消えない
抱きしめてくれないと許してもらえているのかわからない
「座って?ほら、、、さっさと座れ」
語尾を強められると少年はビクビクしながら床に座る
「先生は?プリン食べる?さっきも食べれなかったじゃない」
「いつもこうやってユウくん一人にしてるの?」
椎名の問いかけはまるで聞こえないといった風に彼はもっていた紙袋を机に上げた
「ユウにいいもの買ってきたんだからそんなに怒らないでよ」
そういって中から取り出したのは二体のぬいぐるみ
手の平より少し大きいぐらいのそれを掴んで少年に見せながら彼は笑った
「ほらユウ、、お前と一緒、赤い首輪つき」
犬のぬいぐるみは少年のすぐ隣に置かれた
少年は初めてみるそれに興味津々で触っていいのか彼に目で訴えかける
クスクス笑いながら彼は「いいよ?ユウの好きにして」といった
恐る恐るぬいぐるみを触って感触を確かめる
少年はそれが動いたり、噛んだりしないか確かめてからようやくギュッと抱きしめて
ふわふわした生地に頬を摺り寄せてみたり、匂いを嗅いでみたりした
それからぬいぐるみを舐めようとして、彼におでこを弾かれて舌を慌てて引っ込めた
「それ買にいったの?」
「んー...これはついで。ユウのプリンを切らしちゃって...まぁ言葉が言えたご褒美ってとこかな」
「それ.....もしかしてとりって言ったこと?」
すると彼は目を見開いて驚いた
「へー!さすがだね!先生、ユウから聞きだせるなんて」
彼は自分以外に少年が口を開いたことを拍手しながら聞いた
「他は?なんか言ってた?」
「いや....好きか聞いたら泣き出して...」
「だろうね、好きなんて言ったら俺に殺されるからね」
「え?」
さらりと普通に言われて聞き逃してしまいそうだった
彼はぬいぐるみで遊ぶ少年にしゃがみ込んでその頭をなでる
「こっちはユウの好きな鳥のぬいぐるみ」
もう一つのペンギンのぬいぐるみを見せると、少年はそれを食い入るように見る
目の前で彼の手の中でちらつかされて手を伸ばすとその手はパシンッとはたかれてしまった
「こっちはもっといい子になったらやるよ」
彼は少年に見えるようにわざと高い棚の上に置いた
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