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一緒にぎゅっと握ってもゆるゆると力が抜けていく
見ると指に巻いてある包帯が取れかかっていた
「見せて?」
取れかけの包帯の下は爪のない指
それが3本並んでいた
「そっか...これじゃ握れないね」
なぜこんなことができるんだろう
自分にだったら耐えられない
爪を剥がすなんて、拷問と一緒じゃないか
だけど少年は指に触れても表情を変えない
それどころかうっすら笑みまで浮かべている
一つため息をついて椎名はスプーンにプリンをすくって少年の口元まで運ぶ
だけど少年は想像通り、口を閉じたまま受け入れなかった
やっぱりだめか...
”俺以外のは食べないよ”
彼の言葉がこだまする
そうやって少年の何もかも管理して支配下に置いているのだろう
そのことにすら少年は無知すぎて気づかない....いや気づけないのか
「お願いだから何か食べて?」
少年はそっぽを向いて床に転がった犬のぬいぐるみに手を伸ばし、イスからも飛び降りて勝手に遊び始めてしまった
「どうしようかな...」
このまま食べなくてもし今日も彼が食事を与えなかったらどうしよう
食べれないのは何よりも辛いことを僕は知っている
床でぬいぐるみを動かしている少年を見降ろしてながら考えていると椎名はあることを思いついた
「そうだ....ユウくん...ちょっとそれかして?」
同じようにしゃがみ込んで少年の手の中からぬいぐるみをそっと受け取った
そのぬいぐるみを少年に向けて小刻みに動かして
「ユウくん!こんにちは!」と明るくいってみた
目の前で傾けたり顔に近づけたりしながら、人形劇のように声色をかえて少年に話しかけてみる
目の前で動くぬいぐるみに初めは戸惑っていたがだんだんと興味を示し始め、そのうち目が色づくようにキラキラと輝き始める
「あっ...あーっ...」
声をあげてぬいぐるみに反応を示したとき、椎名はテーブルに置いたスプーンを掴んでぬいぐるみの口元に当てて見せた
「お腹すいたなぁ!モグモグ....おいしいなぁ」
「食べれたね!えらいえらい!」
”えらいと”いいながらぬいぐるみの頭を撫でて一人二役の劇を続けた
「ユウくんも食べてほしいなぁ...一緒に食べよう?」
ぬいぐるみを少年の唇にチュッとつけると少年は嬉しそうに目を細めた
「一緒に食べよう!」
ぬいぐるみをフルフルさせると、手を伸ばして触ってくる
まるで本当にこれが話していると信じているように見ている姿を見て、
あぁ...本当に子どもなんだなと今更ながら実感してしまった
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