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食べ終えた少年は残念そうだったけれど、そのうちまたぬいぐるみを手にとって遊びだす
「まって。そっちに行かないで?」
手を繋いで立ち上がりかける少年を自分のほうに引き寄せる
そうしないとフラフラとまたあの部屋の前に自ら行ってしまうから
さっきの人形劇のおかげで、少年はぬいぐるみにまるで話かけるようにしている
「う、、、ぅー。」
さて。
食事とまではいかないけれど、少年に食べさせることもできた
次はどうしようか
彼が帰ってくるまでの間に、少しでも1ミリでもいいから少年に近づきたい
指先の包帯を思い出して、傷の手当てをせることにしよう
やっと手錠も外されたし
太ももの火傷も気がかりだった
部屋の端に無造作に置かれた自分のカバン
その中から包帯やら消毒やら必要なもの取り出すと、それに気づいて少年は椎名のそばに座って体をピタリと擦り寄せる
「なにするか分かるの?」
包帯を手に取ると指を見せて、薬を見せると口を開ける
きっと何度もこうやって、怪我のたびに手当てをされてきたのだろう
一連の流れは理解力の乏しい少年でもできるようになるほど、毎日のように繰り返されてきたんだ
服をめくり、包帯を外し、隠れた皮膚を見るたびに目を背けたくなる
包帯を巻き直すと引き連れた傷が痛むのか時々、少年は顔をしかめて体を強張らせた
「大丈夫だよ。痛くない。痛くない。」
椎名はぬいぐるみを顔に寄せて何度も繰り返し繰り返し呟いた
気休めのおまじない
それでも少年が痛みでぎゅっと握った拳がだんだん開いていくのが見えた
ふと最初の時を思い出した
傷がひどすぎて明らかに痛みを伴うものなのに、彼にに言われるがままうなづく少年の姿
痛くないよね。ユウ。
大丈夫だよね。
痛いも、辛いも、好きも、嫌いも、そこに少年の意思はない
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