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「これでよし。痛いの終わったよ。」
ほどけた包帯の事を思い、キツめに巻きあげて、手当てを終える
涙ひとつ流さずに耐えた少年の頭をひと撫でして、椎名は道具を鞄に片付けていると、服の袖をクイクイと引っ張られた
「ん?なぁに?どうしたの?」
少年は椎名の服をつまみながら、じっと目を見つめてくる
「なぁに?」
もう一度尋ねると、今度は口を軽く開けて舌先を出して見せた
小さな唇からのぞく赤い舌先がチロチロと動き、自らの下唇を舐める
何か言いたい事があるのだろうけれど、椎名にはそれがなんなのかわからなかった
「それ、なぁに?」
答えは返ってくるはずもなく、少年は舌を出したまま、顔を突き出すようにするだけ
「う、、、んと。ごめん。わからないや。」
もどかしくて、悔しくて、頭を撫でるだけしかできなくて
少年は首を傾けて舌をひっこめて、掴んだ腕をそっと離した
彼なら何をしたいのかわかるのだろうか
もっと少年を知れば、理解してあげられるのだろか
少しでも自分に慣れてくれたら、、、と思う
「ねぇ、、君はなんでここにいるの?」
ぬいぐるみに夢中な少年の背中越しに聞いてしまう
答えないのは分かってる
だけど、傷だらけの身体、部屋に一人きり
さみしくないわけ、、、ないよね?
嫌じゃないの?
ここから出たくないの?
本当は何を思っているの?
「助けたいよ、、、君のこと」
思わず零れてしまう
なんでこんなことになったんだろう
だけど、、、少年を知ってしまえば一人で逃げるなんてできない
「う、、、ゆ、、、ぅ」
それは少年が小さく呟いた声だった
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