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「今、なんて言ったの?!」
思わず飛びつくように少年の肩を掴んだ
驚いた少年はビクビクと体を怖がらせて後ずさりをした
「もう一回言ってみて?!」
「、、、う?」
「そう!ユウって。君の名前。」
「ぅ....」
「今言えたじゃない!」
矢継ぎ早に言われて少年は困惑の表情を浮かべてうろたえてしまう
椎名は慌てて掴んでいた手を離して、自分の頭をぐしゃぐしゃと掻き毟った
気のせい?...いや...たしかに言った気がしたんだ
焦ってはいけないと分かっていても、結果を早く求めてしまう
できれば今すぐに
できれば彼がいないうちに
そうした気持ちが前面に出てしまい、少年を怖がらせてしまった
これでは心を開くどころかもっと固く閉ざしてしまう
取り繕うように椎名は少年に笑った
「ごめん...びっくりしたね」
ぬいぐるみをまるで守るように抱きかかえながら、少年は椎名が笑ったことにホッとするように口元を緩ませる
少年を見ていると思うことがある
こうやって誰かが笑えばそれを真似するように笑うこと
彼に対しても、彼が微笑めば少年はいつだって笑顔を見せる
それは不安からなのか、依存心からなのか
ここにいる限りはそうやっていないと生きていけないのだろう
けれど表情を失わないだけまだマシなのかとも思う
願わくばこの笑顔が消える前にここから連れ出してあげたい
何も知らないこの少年に世界はもっと広くて、もっと明るいことを教えてあげたい
痛いことばかりじゃなくて、辛いことばかりじゃなくて、もっともっといろんなことが溢れていることを教えてあげたい
椎名は少年を後ろから抱きしめて耳元に唇をよせると、少年はくすぐったいように体を捩りながら、腕の中に納まった
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