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後ろから抱きすくめて手の平を合わせる
指を一つ一つ絡めながら少年に見せるようにして少年に語り掛ける
「これは、ユウくんの人差し指、お母さん指だよ」
「....」
「この大きいのが親指、お父さん指なんだけど...わかる?」
子供をあやすのと同じようにゆっくり一つ一つ、伝えていく
「いい?じゃあ...僕の指でお母さん指はどれ?」
そういうと少年は椎名の指をキュッと全部掴んでしまった
「うーん...だめか....もう一回ね?これが....」
そういいながら何度も何度も繰り返し言いきかせていくと、見た目の年齢の割には覚える能力が低いことが分かる
それはずっとここにいて覚える必要がなかったからなのか...もともとなのかは定かではないけれど
もともと使わなくなると人間の能力は衰えていく
例えば、入院して寝たきりになると、一か月もすると歩けなくなるのと同じように
新しいことを覚える必要がないから記憶力が低下するのか
...とすると、他が強くなっているところはどこか
それはここで過ごすことに耐える順応性
普通ならとてもじゃないが耐えられない
現に自分でも無理だと思っている
それでもここにいるのは”少年”のために過ぎなかった
今日は一日、少年を膝の上に乗せて話続けていた
少年は回数を重ねるたびに、笑ったり、考え込んだり、体を捩って椎名の顔をのぞいたり...
反応があるともう一度あきらめずに教えてみようという気になった
実際、もうやめようかと手を離すと、少年は”もっと”と手を引っ張て強請ってくる
楽しいと思ってくれているだけでも良かった
ここには楽しいなんて感情が生まれるものはないのだから
「じゃあ....僕の指で赤ちゃん指はどれ?」
赤ちゃん指は一番小さい小指
もう何時間繰り返していたんだろう
そろそろ彼も帰って来るかもしれないな
これで今日は終わりにしないと.....そう思った時だった
少年がその小さい手の平で、椎名の小指をそっと握ったのだ
「....えっ!....」
あきらめかけていたところに突然の少年の行動
驚きと感動で椎名は思わず、少年を抱きしめていた
「すごいよ!!ユウくん!!」
力いっぱい抱きしめてしまったせいで少年は苦しそうに腕の中から小さく声を上げた
「ぅ....」
「あ...ごめん!苦しいよね!?」
それでも握られた小指はつながったまま
椎名は少年の体を反転させて向きあった
「えらいね!よくできた!」
そういって、頭を撫でてつないだ小指を見せながらゆっくり伝える
「これは約束するときにこうやって結ぶんだよ」
小指と小指を絡ませてその意味を教える
「僕はユウくんを守ってあげるから....ユウくんは僕を信じること」
掲げたその指を見ながら、少年はキョトンとした顔で椎名を見つめるだけだった
けれど抱きしめられて、つながれた指から伝わる暖かい体温が心地よくて、少年はなかなか指を解くことができなかった
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