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「はい。あーん。おいしい?」
答えを考えるひまもなく、飲み込んで次の一口を少年は強請っていた
早く早くと彼の腕を掴んで,椅子に腰掛ける彼によじ登るようにしながら繰り返す
よっぽどの空腹だったのか..丸二日ほとんど食べてないのだからあたりまえだが、それを見越してなのか彼が用意していたチャーハンのようなものは皿に山盛りにつがれていた
自分で食べることができない少年は自分と皿を行き来するスプーンを目で追ってはひな鳥のように求めては口を開ける
「良く噛んで」とか「焦るなよ」とかそんなことを言いながら、彼は楽しそうに食べさせていた
その横で椎名は彼が昨夜買ってきたコンビニの弁当を前にして、それに手を付けられるはずもなく、ただ、二人の様子を見る
彼は何だかんだ言っても椎名の食事と自由を確保してくれている
それがなぜなのか....最初の頃のようにつないでしまえばいいのにそれをしない
いなくなって構わないということなのか、逃げないと高を括っているのか
「食べないの?」
「ユウくんはいつも、、、同じものを食べてるんだね?」
椎名が見る限り少年はいつも同じものを食べている気がする
彼が毎晩買ってくるコンビニのものに少年が食べるものは含まれておらず、彼もいつも違うものを食べているのに、その目の前で少年はなんの疑問も持たず彼に与えられるものだけを食べていた
...違うとものといえばプリンだけか....
「これしか知らないからね。、、、おいしい?」
彼は嬉しそうに頬張ってる少年の口元についたご飯粒を指ですくって自分に口元に運ぶ
「飼い犬ってさぁ、ドッグフードしか知らないと、人の食べ物に見向きもしないんだって。」
淡々と話す彼のそばでまさしく餌を与えられる少年
「他のものが食べたくなるのは馬鹿な飼い主が好き勝手にあげてるからなんだよ?」
「でもこの子は犬じゃないよ。ちゃんとした人間だろ?」
椎名と彼が話ているうちに彼の手は止まり、少年は次の一口が我慢できなくなって、皿に手を伸ばした
精一杯伸ばした指先は皿の端に触れぐらついた少年の体重がかかり、ガタンと音をさせて傾いた
その拍子に中身がこぼれてテーブルの上を汚した
「ぁ....」
小さくそういった少年は伸ばした手をひいて、もう片方の手で包むように胸の前で握った
「なにしてんの?だめじゃん」
彼の眉間にしわが寄ると、纏う雰囲気が冷たく変わっていく
少年は目をおどおどさせながら、ふらつくように一歩後ろに下がった
彼は立ち上がり、テーブルの上に置かれた皿を掴んで少年に、なんの躊躇もなくそれを振り下ろした
半分残った皿の中身は空を舞い、自分の頭の上に振りあげられた腕に気づいた瞬間、少年は思いっきり目をつぶった
「......」
ガランと床に皿が叩き落ちる音が響く
その後、皿はガラガラと床の上を回転してながら少年の足元で動きをとめた
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