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「先生..無茶するから....」
彼はそういって消毒とガーゼを持ちながら罰の悪い顔をしていた
幸い軽くかすっただけで傷口は大したことはなかった...けれどあのまま少年が殴られていたのかと思うとぞっとする
まともに当たればただでは済まなかっただろう
「君がしなければこんなことにはならなかっただろう?」
「まぁ...そうだけど...」
予期せぬ椎名のケガに彼は少しだけたじろいですぐに少年への怒りを静めた
こんなもので済んで良かったけれど、もっとうまく立ち回れないものかと我ながら情けない
ふと気づくと少年は彼の背中にしがみ付いて少しだか顔を出して椎名のことを覗いていた
「ユウくん..大丈夫?」
「お前なにやってんの?」
彼は少年の行動にイライラしながら吐きすてるように言って腕を掴んで椎名の前に引きずり出す
「いいよ。やめて。」
彼に引きずられるようにして前にでた少年は下を向いたまま目を合わせようとはしなかった
「もうこれ以上、この子に暴力を振るうのはやめてほしい。」
「は?」
「君がひどい事をしなければ、僕はべつに2人の邪魔はしないよ。」
そして一呼吸おくと拳を握って彼に言った
「こんなことしていたら、今にあの子は君から離れていくよ」
「....」
「大事なら、傷をつけるんじゃなくて、守ってあげないとだめだ」
その言葉は昔、彼が自分の元へ通った時も言った記憶がある
彼は"人との接し方がわからない"と言っていた
だからなのだろうか
だから大事な相手にこんな風に暴力で閉じ込めて自分の支配下に置きたいのだろうか
「ユウが俺から離れるなんてあるわけない」
その表情は自信に溢れていて、椎名の言葉など聞く耳を持つ気もないようだった
実際、彼に対して依存心が強い少年が自ら離れるなんてことはなかなか難しいだろう
でもそれは、二人しかいなかった世界でのことだ
人間は欲が深い生き物だ
一つ知ってしまえば、新しいことが知りたくて仕方ない
少年の世界に一つ、知らないことが増えた
それが”僕”だ
今にきっと、少年は彼から離れていく
僕がそうさせてみせるから
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