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いつもと同じように彼はしばらくすると家を出ていった
2人きりの時間が始まる
彼は出ていく時、ひどくイラついていて少年が玄関まで後ろをついていっても見向きもしなかった
腕を掴んだ少年を振り払ってはわざと大きく音が出るように扉を閉めていった
少年は扉の前でたたずんでいたがその背中は悲しそうでひどく哀れに見えた
彼の機嫌の悪さは椎名の一言”今に少年が離れていく”
あの怒り方は図星なのか...痛いところをついたんだと
椎名は少年のと二人だけの時間を無駄にしないようにすぐに少年のそばに近づいた
「ユウくん」
玄関で彼を見送った少年はほっておくと何時間でもそのままでいる
椎名はその都度手を引いて部屋に連れ戻す
「行っちゃったね?こっちで一緒に遊ぼうか」
手を引いて連れて行こうとすると少年が何か言いたそうな顔でじっと見つめてくる
目線は椎名の額のガーゼに向かっていた
もしかして....椎名はなんとなく感じた
その場で膝立ちになって少年に目線の高さを合わせてできるだけゆっくり話しかけた
「びっくりさせちゃったね、...ごめんね?」
するとおどおどしながら小さな手を椎名に向かって伸ばしてきた
指先が額にそっと触れそれが左右に優しく動いた
「....撫でてくれたの?」
心配そうに見上げたまましきりに手を動かしてくれる少年の姿を見て胸の奥が締め付けられた
「大丈夫だよ...ありがとう...ありがとうね」
そういいながら椎名は思わず少年を抱きしめていた
彼はこの子を優しく撫でることがあるのだろうか
例えば今伸ばした細い腕にも浮かぶ傷に、心配しながらこんな風に優しく触れて撫でてあげることはあるのだろうか...
「言ったでしょ?僕が君を守ってあげるって」
それは思わずつぶやいた言葉で....小さすぎて少年には届かなかったかもしれない
抱きしめた腕の中で苦しそうにもがいた少年に気づいて椎名は慌てて腕の力を緩めた
「ぷはぁっ...!」
息継ぎをするように顔を赤らめた少年が胸元から顔を出した
「あはは...ごめんごめん」
椎名が笑うの見て少年は腕の中で同じように嬉しそうに笑顔を見せた
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