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「今日は何しようか?」
少年は首をかしげるようにしてその意味を分かろうと眉を寄せる
言葉がない少年との時間
少年が答えることはないけれど何か楽しいと思えることをしてあげたい
けれど少年はぬいぐるみを抱きながらしきりにもう一つの部屋の扉を気にしている
「あそこに行きたいの?」
本当は気が進まなかったが、だめだという理由もなく仕方なく立ち上がる
相変わらず重たい扉
やっぱりこの扉だけ、後付けで取り替えたように見える
少年を閉じ込めておくための部屋
開けると当たり前のようにその無機質な白い部屋はあった
中の空気がふわりと椎名の鼻をかすめる
開けた瞬間から椎名は嫌な感じが拭えず、足を一歩踏み入れるとクラリと眩暈がしそうだった
椎名のそばをすり抜けるように少年は窓に一目散に向かっていた
胸には大事に抱えたぬいぐるみ
少年は窓枠に腕をかけてぬいぐるみを窓に執拗に押し付けている
「なぁに?どうかしたの?」
椎名は首をかしげながら近づいて後ろから外を覗いた
今日はあいにくの雨
窓には雨の雫が幾筋も流れては消えていく
少年の好きな外の景色は見られそうになかった
「あぁ..今日は雨なんだね?これじゃとりさんも今日は会えないねぇ」
「あー...」
それでも少年は声を出しながらぬいぐるみを窓に押し付けている
「もしかして....見せてあげてるの?」
窓にしきりにくっつけては何かを訴える姿
少年は言葉こそ話さないけれどその表情は豊かだ
好きなこと、楽しいこと、嬉しいこと、.....そして怖がること
こちらが話しかけても、分からないなりに反応する
彼の顔色を伺うように神経を尖らせて、彼の眉が1つでも動けばそれを感じ取って瞳が揺れる
教えられたことなのか、自ら覚えたことなのか
それも並大抵のことではなかっただろう
1つ間違えれば少年に与えられるのは痛みだ
それを回避するために幼い少年は必死になって身につけたはすだ
それでも、少年の心はいつも彼にまっすぐに向かう
それを分かっている彼は、うすら笑いを浮かべながら
少年の反応を見て楽しんでいる
まるで傷つけるために少年を試しているようで
窓の外をぬいぐるみと覗く姿が、かわいい反面、ひどく悲しく見えた
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