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バスルームに透明な泡が浮かぶ
少年はお湯の中から手を出して夢中になって
時より、ふふっと彼を見上げては笑った
向かい合わせでバスタブに浸かりながら濡れて張り付いた前髪を剥がしてやる
昨日のことがそんなに楽しかったのか
普段なら怖がって足が重いのに今日は椅子から飛び降りるようにしてすんなり後をついてきた
もしも今、素直で純粋な少年の期待を裏切ったらどんな顔をするだろう
...もしもなんてやめよう もうしないと決めたんだ
彼は頭を振ってバスタブの縁に頬杖をついた
温まった少年の身体がほんのりと赤く染まるとそれに合わせて傷跡が濃く浮かび上がる
どんなに消したつもりでもそれは0ではなくたんなる上書きにすぎない
「ユウ」
天井から落ちた雫の音が響く
少年はゆっくり顔をあげた
「俺の事、好き?」
迷うことなくコクンとうなづいてまっすぐ彼を見つめる
全身で彼の言葉を聞いていた
「じゃあ、どれくらい好き?」
「..?.」
"どれ位"
その答えが返ってこない事を知っている
笑みも無く、ただ少年を見据えて視線をそらさない
その冷ややかな目は穏やかだった少年の心を揺らしていく
すると彼は一瞬にして固まっていた顔を崩して吹き出した
「なんてね。言えるわけないよな」
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