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帰って来た彼は大きな白い箱を手にしていた
少年を見るなりその目をのぞき込んで頬に触れる
「なに、お前泣いた?目赤い...」
「おかえり、実はさ...」
そうして帰宅早々、今日の事を話して聞かせた
”せんせい”と呼べるようになったこと
そのあと一日中、彼の名前を呼ぶ練習をしてたこと
それができなくて泣いてしまったこと
「へえ、せんせいって言えたの?すごいじゃん」
ひとしきり聞いた彼は少年の頭をグリグリと撫でてから言った
「ちょうどよかった、じゃあ今日はパーティだね」
そう言ってテーブルの上にもっていた白い箱を置いた
「なにそれ?」
「ユウ、これ開けてごらん?」
そう言ってわざわざ少年を椅子に座らせて目の前に箱を置きなおす
彼が少年の手を添えて一緒にその箱を真上に持ち上げた
「わぁずいぶん大きいね」
箱の中身は、イチゴのデコレーションケーキ
それも2段になったホールケーキだった
「お誕生日会やろうと思って」
「え、今日はユウくんの誕生日なの?」
少年は初めて見るケーキの前でパチクリしながら興味津々に眺めている
「ユウ、俺のこと見て?」
彼は少年のすぐそばにまるで跪くようにしゃがみ込み微笑む
両手を包み込むように握って少年の注意を引いた
「ユウ」
目の前のケーキが気になって仕方がなかった少年も二回目に呼ばれると慌てて彼に目線を向けた
「今まで誕生日とか一度もしてこなかったけどこれからは毎年お祝いしてあげる」
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